抄録
界面活性剤の蛋白に対する凍結変性の防御作用の機構を調べる為に,オボアルブミン溶液に各種界面活性剤を加えた時の不凍水の水和特性;量的変動,緩和測定による分子相関時間覧,並進運動の自己拡散係数D,などの温度依存性を^1HNMRにより調べた.その結果,非イオン性の活性剤は,これまで調べた糖類,ポリオール類,アミノ酸などと同様,蛋白自身の水和量を著しく減少させ,τ_cの増加,Dの減少などから蛋白-水和水間の相互作用を増加させるが,イオン性の活性剤ではこのようなことは認められない.これらのことから,非イオン性の活性剤の防御機構は,これまで報告した糖類などと全く同様に,活性剤分子が親水性のヘッドグループで蛋白の水和水の一部と置換して相互作用の強い擬似的水和層を形成し,蛋白を保護するためと考えられた.