凍結および乾燥研究会記録
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9)乾燥BCGワクチンの混合媒質に関する研究
川崎 二郎
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1961 年 4 巻 p. 58-66

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抄録

BCGワクチンの凍結乾燥の際に、媒質としてグルタミン酸ソーダを用いると耐熱性を高め得ることは、多くの報告に明らかであり、又生物学的製剤の製造基準にも適用されているところである。演者は、より以上の生残率,及び保存性を高める為に行つた媒質に関する予備実験の過程において得た2, 3の成績について報告する。高濃度径口用BCGワクチンの凍結乾燥に際し、グルタミン酸ソーダを基礎媒質とし、これに第2の媒質である可溶性澱粉を加えた混合媒質を用いると、乾燥直後の生菌数も高く、又保存性にも勝れた結果を示した。低濃度皮内用BCGワクチンでは、第2の媒質として可溶性澱粉の他に、C.M.C.及びP.V.P.等の混合媒質を用いてその影響を調べたところ、C.M.C.及びP.V.P.においては、それ自体の溶解性が劣り、ワクチンの再浮遊性も不良であり、生残率も低かつたので、この点はグルタミン酸ソーダとの相対的な濃度の関係について、更に検討を重ねなければならない。一方、可溶性澱粉混合媒質を用いた乾燥ワクチンでは、100℃1時間加熱後の成績の生残率よりみると、菌濃度に対し、グルタミン酸ソーダの濃度が比較的高い場合には、生残率は明らかに可溶性澱粉の添加によつて高められる結果を示した。この傾向は、真空熔閉したアンプルの場合よりも、むしろ平圧熔閉アンプルの場合に著明であった。このことは、同時乾燥の場合、高濃度の媒質程、被乾燥体よりの昇華速度が減ずると云う現象を裏書きすると同時に、第2の媒質として添加した可溶性澱粉が、何等かの作用で昇華現象を肋ける役割を果していると共に、保存中における被乾燥体の水分に関与して、生残率を高めているものと思はれる。

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© 1961 低温生物工学会
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