凍結および乾燥研究会記録
Online ISSN : 2432-9924
Print ISSN : 0288-8289
11)凍結乾燥痘苗の分散媒について
沢田 哲治鈴木 正敏
著者情報
ジャーナル フリー

1961 年 4 巻 p. 75-84

詳細
抄録

著者等は長期間の高温保存に酎える乾燥痘苗を作る目的で、分散煤に関する研究を進めてきた。すでに、第3回研究会と第8回日本ウイルス学会において、グルタミン酸ソーダがペプトンと同様に優れた分散媒であることを報告した。今回は組織片を含んだ常法のものと、フロールカーボン処理によつて組織片を除去したものの2種類の乾燥痘苗における、分散媒の影響を追求したので、その成績の一部を報告する。実験(1) 表1に示すように、常法の乾燥痘苗で「第2の分散媒」の影響を調べた。現在の保存成績の範囲ではすべて対照と同程度に力価の低下を来たし、その効果を認めることが出来なかつた。実験(2) フロールカーボン処理乾燥痘苗において、表2に示した分散媒の影響をみた。単一の分散媒に関する保存成績は次の通りである。グルタミン散ソーダは濃度によつて分散媒の効果に大きな差が見られた。中でも、1.0%が最も良く、この前後の濃度ではその効果を減弱し、5.0%以上では力価が対照よりも低下していた。この濃度差の影響は常法の乾燥痘苗の場合よりも強く現れていた。ペプトンは1.0%グルタミン酸ソーダと同程度に力価を保持していた。乳糖は対照より低下し、その効果を認めることが出来なかつた。以上のことから、分散媒としての効果をグルタミン酸ソーダとペプトンに認めた。現在、フロールカーボン処理痘苗(表2)における「第2の分散媒」の効果の追求,及び乾燥痘苗(表1, 2)の煮沸による耐熱性試験を行つているので、研究会までに得た成績をまとめて報告する予定である。表1.実験(1) 常法の乾燥痘苗[table] 表2.実験(2) フロールカーボン処理痘苗[table]

著者関連情報
© 1961 低温生物工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top