凍結および乾燥研究会記録
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8.痘苗の凍結乾燥に関する研究(第2報)(D.凍結乾燥及び保存の被乾燥体に及ぼす影響について(I部))
柳沢 謙北岡 正見多ヶ谷 勇北村 敬漆川 正夫山内 一也沢田 哲治鈴木 正敏
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1962 年 5 巻 p. 65-68

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抄録

我々はグルタミン酸ソーダを分散媒とした凍結乾燥BCGワクチンが高温において力価が安定なことから、長期間の高温保存に耐える安定な乾燥痘苗を作る目的で次の実験を行った。1.先づ、グルタミン酸ソーダ、ペプトン、L-Smixtureを分散媒とした痘苗及び分散媒を含まない痘苗を凍結乾燥し、長期間の高温保存後の力価から分散媒を比較した。既に、37℃と45℃、6ヶ月迄の保存と人体接種によって得た成績は第3回研究会において報告したが、今回は更に長期間の保存成績を追加する。37℃と45℃の長期間の保存において、グルタミン酸ソーダとペプトンを分散媒とした痘苗は良く力価を保持していた。しかし、L-Smixtureを分散媒とした痘苗と分散媒を含まない痘苗は短期間の高温保存で著明な力価の低下を来していた。なお、5℃、24ヶ月保存後の各痘苗は何れも乾燥直後と同等の力価を保持していた。この実験から、乾燥痘苗の分散媒としてグルタミン酸ソーダがペプトンと同様に優れたものであることを確認した。2.先の実験で2%と5%のグルタミン酸ソーダを分散媒とした痘苗の力価保持は5%が良い傾向にあった。そこで、濃度差の影響を調べるために、濃度を2%、5%、7.5%、10%の4段階にして5%ペプトンと比較した。37℃、12ヶ月間の保存では何れも力価保持に殆んど差が見られなかった。しかし、45℃の長期保存では5%グルタミン酸ソーダが多少多く、2%と10%ではやゝ低下する傾向が見られた。従って、濃度差の影響は著明ではないが、45℃の長期保存において少し影響が現われてくるように思われる。

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© 1962 低温生物工学会
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