2015 年 3 巻 1 号 p. 3-16
歓待については、神の歓待と結びついた「無条件の歓待」、現実社会で実際に執り行われる「条件付きの歓待」、そして主にサービス産業で用いられる「ビジネス用語としての歓待」がこれまで注目され、それぞれの特徴が検討されてきた。本研究では、これらの観点を基にしながら、観光地と歓待の関係性について、鹿児島県の南端に位置する与論島を事例として検討した。
その結果、与論島では、1970年代に「自由」や「恋愛」のイメージが関連する無条件の歓待が観光客に期待されたが、かかるイメージやそれに伴う観光客の実践が地元住民の反発を招き条件付きの歓待が求められるようになったこと、そうした中で、祖先崇拝と関連した強制的な飲酒習慣を再構成した与論献奉と呼ばれる観光客の歓待儀礼が創造されたことが明らかになった。また、管見の限りこれまでの議論にはない新しい歓待の姿として、映画「めがね」においてサービスとしてのそれとは異なる自由な歓待が提起され、それが新しいタイプの観光客を集めていることや、観光客の歓待には観光客自体が深く関与しており、特に近年では地元住民と連携しつつかかる活動に中心的な役割を果たしていることも確認された。