観光学評論
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キリスト教巡礼におけるホスピタリティの現在
サンティアゴ巡礼の巡礼宿とオスピタレロに着目した人類学的研究
竹中 宏子
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2015 年 3 巻 1 号 p. 17-33

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抄録
サンティアゴ巡礼は聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラ(スペイン)を参詣するキリスト教巡礼で、その起源は中世に遡る。長い間下火であったこの巡礼が復活をみるのは、UNESCOの世界遺産登録され、聖年に当たる1993年で、これを境に急激に世俗化が進み、巡礼者数も増加し続けている。このような状況において、巡礼者を歓待する精神のホスピタリティは、現在どのように維持されているのだろうか。本稿ではこのような背景をもつサンティアゴ巡礼におけるホスピタリティの現在を、その担い手であるオスピタレロに焦点を据えて考察した。
まず前提として、ホスピタリティの担い手が宗教関係者から世俗的なオスピタレロに変化した歴史を把握した。次に主要な歓待の場となる巡礼宿でのフィールドワークから、「オスピタレロと巡礼者」「オスピタレロと宿主」「オスピタレロ同士」の間で生じるコンフリクトを克服しながら日々刷新されるホスピタリティのあり方を捉えた。さらに、サンティアゴ巡礼のホスピタリティがオスピタレロを配置する制度および研修制度によって支えられている様相を明らかにし、ホスピタリティの維持と継承の現在的なシステムを考察した。
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