島しょ医療研究会誌
Online ISSN : 2435-9904
八丈島の医療
~救急ヘリ搬送までの経過~
木村 和義
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2011 年 3 巻 2 号 p. 45-51

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抄録

 東京都の島しょではその医療機関の規模が各島によって異なり,対応可能な疾患・病状も異なる.八丈病院は医師数6名,病床数52床の病院で各種疾患に比較的対応可能であるが,一方で対応困難か つ飛行機や船などによる移動が不可能な場合は,救急ヘリ搬送の適応となる.救急ヘリ搬送の所要時 間が徐々に短縮されているが,その前段階である搬送までに至る経過に関しては検討が少ない.今回,当院でのヘリ搬送症例の詳細について調査を行い,患者受診からヘリ出動までの所要時間等などの検討を行った.受診から要請までの所要時間は,比較的短い症例と長い症例に二分され,中央値で1時間48分であった.要請までが早い疾患は,AMI,頭蓋内出血,外傷が主であった.これらの疾患では,受診の時間帯や医師の経験年数によって所要時間に差がなく,医療体制が所要時間へ及ぼす影響が少ないと思われた.要請までが遅い疾患は,当院で管理したが改善不良や悪化した症例,病状が安定したが専門診療を要する症例などが主であった.これらの症例では,事前に基幹病院にコンサルトを行っておく事で,搬送に到るまでの時間を短縮できる可能性があると考えた.要請からヘリ出動までの所要時間は 1 時間 10 分で,比較的時間を要する症例は天候不良がその原因であった.搬送後の1ヶ月生存率は少なくとも約90%であり,ヘリ搬送システムが有効に稼働していると考えた.

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