日本トキシコロジー学会学術年会
第32回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-25
会議情報
一般演題(ポスター)
ラットの脳における部位別コリンエステラーゼ活性の基礎検討
*首藤 康文小嶋 五百合佐々木 淳矢藤江 秀彰林 宏一松本 力林 豊木村 豊恵田島 由香里福山 朋季上田 英夫小坂 忠司原田 孝則
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
脳のコリンエステラーゼ(ChE)活性阻害は,有機リン系およびカーバメート系農薬の神経毒性評価において最も重要な毒性指標と考えられている。また,脳におけるコリン作動性神経の分布は一様ではないため,コリンエステラーゼ活性も部位によって異なることが知られている。そこで今回は,先ず正常ラットの脳を7ヶ所(大脳皮質,線条体,海馬,中脳,視床下部,延髄,小脳)に分けて採材し、部位によるコリンエステラーゼ活性の差を調べた。次に,有機リン系殺虫剤のフェンチオン(MPP)を投与したラットの脳について,同部位による抑制の程度および回復状態の差異について検討を加えた。
【供試動物】10週齢のWistar系雄性ラット
【MPP投与】0および200 mg/kgの用量で単回経口投与
【測定時期】投与後1および72時間
【採材方法】エーテル麻酔下で放血殺し動物から脳を摘出し,氷冷下で各部位の分離を行った。先ず橋の後端から切り込みを入れて小脳と延髄を分離した。次に視交叉の後端から大脳を二分し,前部から線条体と大脳皮質を分離した。さらに後部は断面の視策の位置で背側と腹側に二分し,腹側から視床下部を背側から海馬と中脳を分離した。分離採材後,各部位の重量を測定した。
【測定方法】脳の各部位に等張トリス緩衝液を加えホモジナイズした後に12500 gで10分間遠心して採取した上清を試料として,JCA-BM1250自動分析装置を用いてヨウ化アセチルチオコリンを基質としたDTNB法によりChE活性を測定した。調製および測定は,採材後速やかに実施した。
【測定結果】対照群における脳ChE活性は,線条体>延髄>視床下部=中脳>小脳>海馬>大脳皮質の順に高かった。MPP投与群における脳ChE活性は、投与後1時間で有意に抑制されたが、部位による差はなかった。投与後72時間では、同ChE活性に回復傾向がみられ、その程度は視床下部>延髄>中脳=海馬>小脳>大脳皮質>線条体の順に高かった。
著者関連情報
© 2005 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top