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荻原 庸介, 黄 基旭, 永沼 章
セッションID: Y-1
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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【目的】我々は、メチル水銀毒性に対する防御機構として、細胞内の蛋白質分解システムの一つであるユビキチン・プロテアソームシステムが重要な役割を担っていることを見出し、さらに、本システムによって分解される蛋白質の中にメチル水銀毒性を増強させる蛋白質が存在し、その蛋白質の細胞内レベルがメチル水銀毒性の発現程度を規定している可能性を示唆してきた。そこで、このメチル水銀毒性増強蛋白質を同定するために、欠損することにより酵母にメチル水銀耐性を与える遺伝子を酵母遺伝子欠損株ライブラリーを用いて検索した。【結果および考察】酵母は約6000の遺伝子を有するが、そのうち欠損可能な約5000種の遺伝子について検索したところ、約60種の遺伝子をそれぞれ欠損した酵母がメチル水銀に対して耐性を示した。これらの遺伝子がコードする蛋白質の中でユビキチンと結合することが報告されているのはNcr1、Hom2、Hom3、Whi2、Ste20およびVid28の6種であった。そこで、これらの蛋白質をそれぞれ高発現する酵母を作製してメチル水銀に対する感受性を検討したところ、Hom3またはWhi2を高発現させた酵母が対照酵母に比べて高感受性を示した。また、両蛋白質が酵母内でユビキチン化されることも確認された。以上のことからHom3およびWhi2共にメチル水銀毒性増強蛋白質であり、両蛋白質の細胞内レベルはユビキチン・プロテアソームシステムによって調節されていると考えられる。現在、両蛋白質のユビキチン化の促進がメチル水銀毒性の発現に及ぼす影響を検討している。
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伊藤 今日子, 梶川 悟, 二井 愛介, 花田 貴宣, 土井 邦雄
セッションID: Y-2
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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抗生剤であるニトロフラゾン(NF)は,その精巣毒性について形態学的研究が行われてきたが,肝臓に対する影響に関する報告はごく少ない. 本研究は,高用量と低用量のNFをラットに投与した際の肝臓に対する影響を明らかにするとともに,NF低用量投与時に肝細胞増殖が確認されたため,肝細胞増殖関連因子の動態を検討した.また,これらの作用へのフリーラジカルの関与についても調べた.その結果,(1) 高用量NFは肝毒性物質としての作用を示し,肝細胞小壊死巣を誘発した.肝細胞壊死にはフリーラジカルの関与が示唆された.(2) 低用量NFはmitogenとしての作用を有し,生化学的・組織学的傷害を起こすことなく肝細胞増殖作用を示し,その作用は用量依存性,かつ可逆性で,連続投与してもある時点で停止することが明らかとなった.また,低用量NFのmitogen作用にもフリーラジカルが関与していることが示された.(3) NFのmitogen作用において,発現の増加した遺伝子セットは,他のmitogenとして知られる物質によるそれとよく類似しており,フリーラジカル発生 → early response genesが増加,肝細胞がprimingを受ける(G0→G1期の細胞が増える) → TNFα,TGF-αの増加による増殖刺激 → c-Ha-rasおよびサイクリンEの増加 → restriction point通過とS期移行 → 肝細胞DNA合成という経路を辿る可能性が示された.この様に,NFは,用量によって肝傷害物質としてもmitogenとしても作用し,そのいずれにおいてもフリーラジカルが関与していることが明らかとなった.また,mitogenとしての作用は可逆的で,その過程は,他のmitogenでみられるそれと類似していることも明らかとなった.
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梶川 悟, 木上 大輔, 二井 愛介, 中山 裕之, 土井 邦雄
セッションID: Y-3
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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【目的】非特異的ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害薬のテオフィリンをラットに投与すると,8時間後まで流涎および唾液腺腺房の分泌顆粒の減少がみられ,24時間後にはこれらの変化が消失していることが知られている.ところが,唾液分泌時の遺伝子発現に関する報告はきわめて少ない.そこで本研究では,唾液分泌に関する遺伝子について,各唾液腺における発現量の相違およびテオフィリンによる発現量の変化を調べた.【方法】7週齢のF344/DuCrj雄ラットにテオフィリンを0(生理食塩液),50 mg/kgの用量で腹腔内に単回投与した.投与後4,8,24時間(n=5)の耳下腺と顎下腺を用いて,分泌タンパクのCystatin S(CysS),Amylase 1(AMY1),細胞膜の水輸送チャネルのAquaporin 5(AQP5),および唾液腺で発現がみられるPDEのサブタイプ(PDE3A,4D)について定量的RT-PCRをおこなった.【結果】分泌タンパクに関しては,CysS遺伝子は顎下腺に,AMY1遺伝子は耳下腺に特異的に発現していた.テオフィリンを投与すると,それぞれの発現量が投与後8時間まで増加する傾向がみられた.AQP5遺伝子は両唾液腺ともに発現しており,テオフィリンにより耳下腺では増加し,顎下腺では減少していた.PDEに関しては,PDE3遺伝子は耳下腺に,PDE4遺伝子は顎下腺に優位に発現していた.テオフィリンによりPDE3遺伝子が両唾液腺で投与後8時間まで増加したが,PDE4遺伝子に変化はみられなかった.【考察】耳下腺と顎下腺ではチモーゲン顆粒の有無など腺房の組織像が異なるが,唾液分泌に関する遺伝子の発現パターンも異なっていることが確認された.テオフィリンによる唾液分泌亢進時には,分泌タンパクの遺伝子発現量が増加する傾向がみられた.しかし水輸送タンパクの遺伝子発現量の変化は,分泌タンパクの変化と必ずしも一致しなかった.PDE遺伝子の転写はcAMPによって制御されていると考えられているが,テオフィリンはPDE3遺伝子のみ発現量を増加させたことから,PDEの各サブタイプごとに転写制御機構が異なる可能性が考えられた.
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山本 敏誠, 内海 博之, 松岡 奈央子, 筒井 尚久
セッションID: Y-4
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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(目的)臨床における薬剤性肝障害の中で、胆汁うっ滞型肝障害は脂肪肝とともに良く認められる病態として知られている。しかし、ラットでは高ビリルビン血漿を示す頻度は低く、またビリルビンが増加した場合でも病理組織学的に典型的な胆汁栓は形成されない。そこで、今回、ラットにおける胆汁うっ滞型肝障害時の新規マーカーを検討するために、自然発生性の高ビリルビン血漿ラット(Eisai hyperbilirubinuria rats, EHBR)及び薬剤誘発(α-Naphthylisothiocyanate、Ethionine、Dichlofenac、Iproniazid)高ビリルビン血漿ラットの肝臓について、ヘム代謝の律速酵素HO-1、胆汁の排泄に関与するトランスポーター(BSEP、Mrp2、Mrp3)、毛細胆管を構成するtight junction(occludin, claudin-1)、ストレス応答遺伝子(HSP70、GADD45)、炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-1β、IL-6)のmRNAの発現を、real time RT-PCRにより解析した。
(結果および考察)EHBRと、薬剤投与によるビリルビン血漿ラットでは、ビリルビンの生合成と排泄に関与する遺伝子群(HO-1、BSEP、Mrp2、Mrp3、claudin-1)のmRNAに発現の増減が散見され、mRNAの解析からもビリルビンの排泄機構が破綻していることが示唆された。また、病態モデルによって、変動するビリルビン排泄に関わるトランスポーター遺伝子等は様々であり、今回の解析では一定の方向性を示さない遺伝子が多数を占めたが、病態モデルに関わらず、共通して発現亢進が認められた遺伝子はMrp3であった。以上の結果から、ラットにおける胆汁うっ滞型肝障害の指標として、胆汁の生合成・排泄に関わる遺伝子が有用であり、特に肝臓から血中へのビリルビン輸送に関与すると考えられるMrp3が重要な指標と考えられた。
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井手 美佳, 久米 英介, 石塚 有希子, 有賀 千浪, 藤村 久子, 鳥海 亙, 山手 丈至
セッションID: Y-5
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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肝線維化初期段階におけるマクロファージの役割について検討するために,Thioacetamide(TAA)をラットに単回投与し,肝に出現するマクロファージ群の種類と線維化の状態について検討した.さらにKupffer細胞の機能を抑制するGadolinium chloride(GdCl
3)を前処置後同様にTAAを投与して検討した.
[方法] 実験1:6週齢F344雄ラットにGdCl
3(7.5 mg/kg)または溶媒を静脈内投与し,24時間後にTAA(300 mg/kg)を腹腔内投与した.TAA投与7日後まで経日的に肝を採材し,HE染色およびAzan染色を施して鏡検した.また,ED1,ED2,OX6等のマクロファージ関連抗体およびα平滑筋アクチン(SMA)抗体を用いて免疫染色を施し鏡検した.TGF-β1およびOsteopontin(OPN)のmRNA発現をRT-PCRにより評価した.実験2:ラット組織球性肉腫由来細胞株HS-Pに,GdCl
3を24時間暴露し,TGF-β1およびOPNのmRNA発現について解析を行った.
[成績] 実験1:TAA単独群では,投与翌日より肝細胞の変性壊死が,投与3日後にはマクロファージを主体とした炎症細胞浸潤が認められた.投与5日後以降これらの病変は軽減した.Azan染色では,投与3日後より線維化が認められた.GdCl
3処置群では,肝細胞の変性壊死は軽減されなかったのに対し,線維化の明らかな軽減が認められた.GdCl
3処置群ではED1,ED2,OX6およびSMA陽性細胞数がTAA単独群よりも少なかった.同群のTGF-β1 mRNA発現は試験期間中低く,OPNのそれは投与7日後に低かった.実験2:GdCl
3暴露群では,濃度依存性にTGF-β1 mRNA発現が抑制された.OPNの発現には変化は無かった.
[まとめ] TAA投与ラットに認められる線維化はGdCl
3投与により抑制されること,GdCl
3は異なるマクロファージ群の出現を抑制し,マクロファージからのTGF-β1産生を抑制することが明らかとなった.本モデルの肝線維化にはマクロファージの産生するTGF-β1が重要な役割を担っていることが示唆された.
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熊谷 和善, 清沢 直樹, 河井 良太, 石川 加代子, 袴田 志野婦, 伊藤 和美, 矢本 敬, 真鍋 淳, 寺西 宗広
セッションID: Y-6
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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【目的】 タンパク合成阻害剤であるCycloheximide(CHX)は肝細胞にアポトーシスを誘発する.我々はCHXを尾静脈内投与したF344ラットの肝臓における病理学的検索および遺伝子発現解析の結果から,投与2時間後に認めたアポトーシス数増加のピークと小胞体(ER)ストレス特異的遺伝子の発現に高い相関性を認め,CHXによるアポトーシスにERストレスが関与することを示した.さらにアポトーシス数増加のピークを認めた投与2時間後に炎症性遺伝子の発現を認め,投与6時間後に病理組織学的に炎症性変化を認めたことから,多数のアポトーシス小体を貪食し活性化したKupffer細胞が病態の増悪に関係すると推察した.ERストレスによるアポトーシス誘発後の炎症性変化とKupffer細胞活性化の関連性について,さらなる検討をおこなうため,以下の検索を実施した.
【方法】 F344/N Slcラット(5例/群)にCHX6 mg/kgを尾静脈内投与し,投与後1,2,6時間後に肝臓を採材した.各個体の肝臓において,TUNELと抗ED1抗体の2重染色,抗NFκB抗体を用いた免疫組織学的検索,微細形態学的検索ならびタンパク発現解析を実施した.
【結果・考察】 2重染色結果について半定量解析をおこなった結果,投与2時間後にTUNELと抗ED1抗体ともに陽性を示す細胞比率が有意に増加した.さらに抗NFκB p65およびp50抗体による免疫組織学的検索により,投与群のKupffer細胞に発現の増加を認めた.以上の結果に加え,微細形態学的検索およびにNFκBなどのタンパク発現解析の結果を含め,アポトーシス貪食Kupffer細胞の増加と炎症性変化の関係について考察する.
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堀江 泰志, 小関 直輝, 大井 小百合, 宮脇 出, 岡村 啓史, 船橋 斉, 田中 浩二, 安場 正子
セッションID: Y-7
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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【目的】医薬品開発においては肝毒性が原因で開発を断念するものが多く,ヒトでの肝毒性を短期間で評価できる試験系の構築が望まれている.近年
in vitro評価系が注目され,ラットやマウスの初代培養あるいは株化肝細胞を用いた検討が多くなされているが,薬物代謝系酵素の発現量が少ないことから代謝物の毒性評価やヒトへの外挿性に問題があった.そこで我々は,よりヒトへの外挿性の高い
in vitro肝毒性評価系を目指して不死化ヒト肝細胞に注目し,既知の肝毒性誘発物質を用いてその有用性を検討している.今回はその一環として代謝により活性化することが知られているアセトアミノフェン(AP)をラット初代培養肝細胞と不死化ヒト肝細胞に暴露して,その反応性を比較した.【方法】ラット初代培養肝細胞はSD系雄性ラットからコラゲナーゼ潅流法により単離し,24時間前培養した.不死化ヒト肝細胞(Fa2N-4株,XenoTech社)は日本農産工業(株)から入手し,3日間前培養した.両細胞とも前培養終了後,AP添加培地(0,0.2,1,5,10 mM)に交換し,24時間培養した.培養終了後に培地中のAST,LDH,LAP漏出量及びミトコンドリア呼吸能(WST-1活性)を測定した.【結果及び考察】WST-1活性は両細胞とも用量依存的な低下を示した.AST,LDH,LAPといった逸脱酵素についてはラット初代培養肝細胞ではそれらの上昇を認め得なかったのに対し,不死化ヒト肝細胞では用量依存的な上昇が認められた.以上,ラット初代培養肝細胞においてWST-1活性以外では検出が困難であったAPの毒性を不死化ヒト肝細胞では鋭敏に検出することができ,薬物誘発肝毒性の評価に有用である可能性が示唆された.
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幸田 祐佳, 松永 佳子, 河合 悦子, 玄番 宗一
セッションID: Y-8
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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腎臓は金属による影響を受けやすく、水銀やカドミウムによる腎毒性にはフリーラジカルが関与すると考えられている。亜鉛はサプリメントとして使用されているが、亜鉛の腎障害については知られていない。亜鉛による脳神経細胞障害の進展にERKの活性化が関与すること、およびその障害が抗酸化剤により抑制されるとの報告がある。今回、培養腎上皮細胞株LLC-PK
1を用いて、亜鉛による腎細胞障害性を調べ、それへのフリーラジカルおよびERKの関与について検討した。LLC-PK
1細胞において、亜鉛(30 μM)は、極めて早期に取り込まれ、24時間後に細胞障害の指標であるLDH遊離を引き起こした。亜鉛暴露3時間後には活性酸素(ROS)産生の増大がみられた。抗酸化剤DPPDは、亜鉛によるROS産生増大および腎細胞障害を抑制した。このような亜鉛によるROS増大の産生源を調べるために、NADPH oxidase の関与について検討したところ、その阻害剤DPIは亜鉛によるROS産生の増大および細胞障害を抑制した。亜鉛暴露3時間後にNADPH oxidaseの活性化に関わるp67
phoxサブユニットのサイトゾル画分から膜画分へのトランスロケーションが引き起こされた。亜鉛による腎細胞障害の進展へのERKの関与、およびそれとROS産生の増大との関わりについて検討した。亜鉛暴露6時間後において、ERKの活性化が引き起こされた。抗酸化剤DPPDは、亜鉛によるERK活性化を抑制した。MEK阻害薬であるU0126は、亜鉛による細胞障害をほぼ完全に抑制したにもかかわらず、ROS産生には全く影響しなかった。これらの結果から、LLC-PK
1細胞において、亜鉛は、極めて早期に細胞内に取込まれ、NADPH oxidase の活性化を引き起こすこと、およびその結果、産生されたROSがERK活性化を介して、腎細胞障害を進展させることが示唆される。
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上原 健城, 渡辺 弘, 伊藤 文男, 井上 知, 越田 光, 中村 益久, 山手 丈至, 丸山 敏之
セッションID: Y-9
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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The present study was designed to characterize the nephrotoxicity induced by the anti-neoplastic platinum complex nedaplatin (NDP) in rats of different ages in comparison with cisplatin (CDDP). A single dose of 15 mg/kg NDP or 7.5 mg/kg CDDP was administered intravenously to 8-, 11-, or 15-week-old male and female SD rats, which were then sacrificed after 10 days. Body weight decreases were observed for both drugs, in direct relation to age. CDDP treatment markedly increased urinary excretion of NAG, γ-GTP, LDH and protein with peaks on Day 4 and complete or partial recovery on Day 7; NDP increased NAG, LDH and protein excretion, but to a lesser extent, and these elevations were generally more marked for females. CDDP increased plasma creatinine and BUN in males and females of all age groups at necropsy. No apparent changes were seen following NDP treatment except in the 15-week-old rats. These results also show that NDP is less nephrotoxic than CDDP. CDDP-treated rats showed remarkable proximal tubular lesions in the renal cortex and corticomedullary region, and the papillary lesions were minor. On the other hand, the NDP-induced nephrotoxicity was morphologically characterized by hyaline droplet changes (electron microscopically, hyperplasia of lysosomes), necrosis or hyperplasia of the collecting duct epithelium in the renal papilla and the epithelium covering the papilla. Cortical lesions, indicated by slight tubular dilatation, were found only in the animals with papillary lesions. In summary, NDP is a promising second-generation platinum complex with reduced nephrotoxicity.
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奈良岡 準, 伊藤 今日子, 鈴木 道江, 田畑 肇, 内藤 邦彦, 東條 英昭
セッションID: Y-10
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
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【緒言】ゲノム創薬の進歩により,バイオ医薬品開発は加速すると考えられる.バイオ医薬品の毒性評価,特に慢性毒性評価は中和抗体の産生などの多くの課題がある.ヒト成長ホルモン(hGH)は,バイオ医薬品としてhGH分泌不全症だけではなく,最近では心疾患などへの適応も報告されている.一方でhGH分泌異常患者は心血管系による死亡率が高いが,そのメカニズムは不明である.そのため,我々はバイオ医薬品であるhGHの慢性暴露による心血管系への影響を検討するモデルとして,トランスジェニック(Tg)マウスを用いて検討した.
【材料および方法】TgマウスにEGFPとhGHの発現を別々に制御した連結遺伝子を導入することで,遺伝子導入を簡便に判定できる様にした.TgマウスおよびC57BLマウスの血漿を8,12,16週齢に採血し,hGH,心血管系リスク評価として中性脂肪,総コレステロール,LDLコレステロール,遊離脂肪酸,過酸化脂質を測定した.また各週齡の心臓および肝臓を採取し,臓器重量を測定した後,組織学的に検討した.
【結果および考察】hGHの濃度は雌雄12週以降ほぼ同じレベルであった.LDLコレステロールおよび過酸化脂質において,雄で高値が認められ,雌で低値が認められた.中性脂肪も加齢に伴い,雄で増加傾向が認められた.肝臓では臓器重量に性差は認められなかったが,組織学的に脂肪滴と思われる空胞化が雄で早期から認められた.心臓では雄で臓器重量が加齢に伴い増加していく傾向が認められ,16週で有意に増加していた.今回の結果から, hGHの慢性暴露による心血管系リスクは雄では高くなるが,雌では低くなることが判明した.またhGH慢性暴露により脂質代謝ならびに抗酸化能に性差が発生した原因として,雄特有のhGH分泌パターンの欠如が影響しているものと考えられたが,さらに詳細な検討を行う予定である.
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仁科 拓, 桑原 正貴, 局 博一
セッションID: Y-11
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
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【目的】薬剤の開発において心電図のQT間隔に及ぼす影響を評価することの重要性が指摘されている。本研究では催不整脈性が高いといわれているウサギを用いて、心筋再分極過程における
IKrと
IKs電流の寄与について貫壁性の部位差に着目し刺激頻度との関連性から検討を加えた。
【方法】JWウサギをウレタンで麻酔した後、人工呼吸下で開胸しホルマリンにより洞結節を破壊して右心房ペーシングをできるようにした。第II肢誘導心電図と左心室の3ヶ所から貫壁性に単極誘導心電図を記録するための電極を装着し、
IKrおよび
IKsの遮断薬として
dl-sotalolとchromanol293Bを単独あるいは両方投与し心拍数120~200回/分でペーシングを行った。得られた記録からQT間隔とARIを測定し貫壁性のばらつきを求めた。
【結果】
IKrの遮断によりQT間隔と全ての部位におけるARIは逆頻度依存性に延長し貫壁性のばらつきも増大した。
IKsの遮断ではQT間隔やARIに顕著な変化は認められなかったが、貫壁性のばらつきは頻度依存性に増大する傾向が見られた。一方、
IKrと
IKsの両方を遮断すると
IKr単独遮断時よりも特に低頻度時においてQT間隔やARIが延長した。貫壁性のばらつきは
IKs単独遮断時よりも頻度依存性に増大した。
【考察】本研究の結果からウサギにおいては心筋の再分極を主に
IKrが担っていることが明らかとなった。一方、
IKsの寄与は小さいものの特に高頻度刺激時の遮断で貫壁性のばらつきが増大することから部位差の存在することが示唆された。また、
IKrと
IKsの再分極過程における関与の程度が
in vitro実験で報告されている結果と本研究で得られた結果では異なることから、安全性試験においても
in vivoと
in vitroの成績を総合して評価することが重要であると考えられた。
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孫谷 弘明, 鳥飼 祐介, 重山 智一, 鈴木 晶子, 肱岡 基樹, 桑野 康一, 福崎 好一郎, 永田 良一, 鬼頭 剛
セッションID: Y-12
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
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【目的】β3アドレナリン受容体は主に脂肪細胞膜上に分布しており,脂肪分解や熱産生を促進することから,抗肥満効果に関係する受容体として注目を浴びている.しかし、臨床試験においてβ3アドレナリン受容体アゴニストは副作用として循環動態への影響が問題になっている。我々は、今回雄性カニクイザルを用い,麻酔下におけるβ3アドレナリン受容体アゴニスト投与による心循環動態の評価を行った.【方法】ペントバルビタール麻酔下にて,雄性カニクイザル(3から7才)の循環動態を測定した。血圧(収縮期及び拡張期血圧)は大腿動脈にカニュレーションを施し,圧トランスデューサーを介して血圧測定用アンプで増幅し,心拍数は収縮期血圧より瞬時心拍計測用アンプを介してHEM 3.5(NOTOCORD SYSTEMS S.A.)に連続的に記録した.心電図は動物用全自動解析心電計を介してECG Processor(SBP-2000,株式会社ソフトロン)に連続的に記録した.今回実験に用いたβ3アドレナリン受容体アゴニストは,前腕橈側皮静脈に急速静脈内投与した.【結果および結論】β3アドレナリン受容体アゴニストのCGP12177(0.3 mg/kg)の投与では,収縮期及び拡張期血圧ともに持続的な低下を示した.一方、心拍数は投与直後から持続的な減少がみられた.また,心電図には影響を及ぼさなかった.CGP12177投与直後から心拍数の減少がみられたことから,心筋β3アドレナリン受容体は陰性変時作用を持つことが示唆された.また心拍数の減少と同時にみられた持続的な血圧低下は,血管平滑筋弛緩による血管拡張によるものと考えられた.ヒトにおいて心血管系の β3アドレナリン受容体は内皮由来型NOS(eNOS)活性を促進することが言われている.今回のサルにおけるCGP12177による心拍数の減少及び血圧低下は、β3アドレナリン受容体を介した心筋および血管内皮細胞内eNOS活性化の可能性を示唆した.
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重山 智一, 鳥飼 祐介, 孫谷 弘明, 鈴木 晶子, 肱岡 基樹, 桑野 康一, 福崎 好一郎, 永田 良一, 鬼頭 剛
セッションID: Y-13
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
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【背景および目的】カルシウム拮抗薬は高血圧の他にも虚血性心疾患や血管疾患,不整脈などの幅広い病気の治療薬として使用されている.カルシウム拮抗薬の高血圧に対する作用はよく研究されているが,正常血圧に対する作用についてはあまり研究されていない.さらに,実験動物を用いた実験は麻酔下で行われていることが多く,ラットやイヌがよく使用されているが,霊長類を用いた実験はほとんど行われていない.そこで今回,我々はサルとイヌにカルシウム拮抗薬を投与し,テレメトリーシステムを用いて心血管系に及ぼす影響を比較した.【方法】予め送信機を埋め込んだ雄性のカニクイザルとビーグルを用いた.ニカルジピンを単回経口投与(0,3,10mg/kg)し,心血管系のパラメータとして血圧,心拍数,心電図に対する作用を検討した.測定はテレメトリーシステムにより連続的に記録した.【結果および結論】薬物投与前の血圧は,サルで収縮期/拡張期:84.2/52.0 mmHg,イヌで収縮期/拡張期:136.0/80.0 mmHgであった.ニカルジピン投与後(10mg/kg),サルでは全例において収縮期及び拡張期血圧の低下(最大20%)がみられ約8時間後まで持続し,イヌでは収縮期及び拡張期血圧の低下(最大35%)がみられ10時間以上持続した.心拍数に関しては投与前値と比較して全例において上昇した(サル:最大327%,イヌ:最大241%).心電図に関しては,サルおよびイヌともにPR間隔およびQT間隔の短縮がみられたがQTcに影響はなかった.今回の実験でサルとイヌの血圧の値がニカルジピンの投与前で大きく異なっていたにもかかわらず,降圧作用の程度がほぼ同様であったこと、さらに血圧下降に伴う反射性の心拍数の増加の程度ではサルのほうが大きかったことから,心血管系への評価はイヌよりもサルの方が有用であると示唆された.
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禹 桂炯, 朴 銀庭, 中山 裕之, 土井 邦雄
セッションID: Y-14
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
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Hydroxyurea(HU), a potent mammalian teratogen, affects proliferating embryonic cells and inhibits DNA synthesis. The teratogenic potential of HU has been well known in experimental animals for several decades. In this study, we investigated molecular mechanisms of HU-induced apoptosis in the telencephalon of the fetal brain by exposing pregnant mice to HU on day 13 of gestation. TUNEL-positive cells began to increase at 3 hr, peaked at 12 hr, and rapidly decreased at 24 hr. Although the changes of
p53 mRNA expression was not observed by RT-PCR, p53-positive reaction was detected immunohistochemically in the nuclei of neuroepithelial cells from 1 hr to 6 hr, and p53-protein expression was simultaneously identified by Western blot analysis. The expression of p53-target genes mRNAs and proteins was detected. The expression of apotosis-related(
fas,
fasL, and
bax) and cell cycle-related genes mRNAs(
p21) was sifnificantly elevated, and the degree and sequence of these target genes expression were similar with those of fas, fasL, mdm2 and p21 proteins expression. Flow-cytometric analysis and Western blot analysis on cell cycle-related proteins suggested that neuroepithelial cells might be arrested at S checkpoint from 3 to 6 hr and at G2/M checkpoint at 12 hr, respectively. From the above-mentioned results, it is suggested that HU-induced apoptosis was considered to be mediated by p53 in the fetal brain.
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大西 優子, 廣田 里香, 梶川 悟, 竹田 奈美子, 春日 敏郎
セッションID: Y-15
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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[目的]神経学的検査は動物の行動異常が神経系の機能不全に起因するか否かを判定し,さらに神経の病変部位を特定する上で有用な方法である.しかし,動物の状態,検査時の動物の姿勢,検査の手技および検査環境によってその反応は容易に変化し診断が困難な場合がある.今回,我々は神経症状が疑われたビーグル犬を用いて神経学的検査の有用性について検討した.[方法および結果]本研究所で飼育中のビーグル犬において,活動性の低下,歩行時のつまずきおよび散瞳が認められたため神経学的検査を実施したところ,対光反射,プロプリオセプション,一側歩行,手押し車歩行,姿勢性伸筋突伸反応,跳び直り反応,踏み直り反応,両前肢における交叉性伸筋反射について異常が認められた.頚髄(C1-6)および視覚経路に病変が存在すると診断し眼科および臨床病理学的検査を追加した.眼底検査において両眼性の視神経乳頭の退色等を認め,蛍光眼底造影においても造影後期に同部位の色素漏出を認めた.血液学検査および血液生化学検査において異常は認められなかったが,脳脊髄液中の蛋白,糖および単核細胞数の増加,潜血陽性が認められた.確定診断のために実施した病理検査において肉眼的には頚髄(C2-4)の横断面(背側)に褐色巣が認められ,組織学的には肉眼所見と一致した部分に結節性肉芽腫性炎が認められた.さらに両側視神経では炎症および脱髄が,終脳から腰髄にかけて囲管性細胞浸潤が認められた.以上の所見から本例は肉芽腫性脳脊髄炎と診断された.[考察]本例に認められた行動異常は,感覚神経による感覚器から脊髄への刺激の伝達および上行性感覚神経線維による脊髄から神経核への刺激の伝達が障害されたことによるものであり,また散瞳および対光反射の低下は視神経炎によるものと考えられた.[結論]神経学的検査を実施することにより病変部位の推定が可能であり,毒性試験においても行動異常を評価し,検査方法や検査部位を選択するための参考となり得る.
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南 春子, 禹 桂炯, 上塚 浩司, 中山 裕之, 土井 邦雄
セッションID: Y-16
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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Etoposide (VP-16), a topoisomerase II inhibitor, is an anti-tumor agent which causes embryotoxicity, exencephaly, encephalocele, anophthalmia and major skeletal malformations of fetuses when administered to dams of rodents. We examined VP-16-induced histopathological changes in the brain of mouse fetuses. Pregnant mice were intraperitoneally treated with VP-16 (4 mg/kg) on 12th day of gestation (GD 12), and fetuses were collected from 1 to 48 hours after treatment (HAT). A moderate decrease of mitotic figures of neuroepithelial cells was observed in the telencephalic wall at 4 HAT. A moderate to marked increase of pyknotic neuroepithelial cells was detected in the brain of VP-16-treated fetuses, and being most prominent from 8 to 24 HAT. These pyknotic cells were also positively stained by TUNEL and cleaved caspase-3 immunostain. It was suggested that excessive neuronal apoptosis was induced in the brain of mouse fetuses treated with VP-16 on GD 12.
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宮川 和也, 成田 年, 富田 真理子, 宮竹 真由美, 鈴木 勉
セッションID: Y-17
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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茨城県神栖町において、ヒ素に汚染された井戸水の摂取が原因と見られる健康被害が報告された。井戸水からは diphenylarsinic acid (DPAA) が検出され、その主な原因物質と考えられている。DPAA 中毒患者において、ミオクローヌス、振戦、小脳失調症状などの中枢神経症状が認められることが報告されており (Ishii et al, 2004)、その治療法の確立が急務である。しかしながら、DPAA の中枢神経系に及ぼす詳細な作用については不明な点が多く、その機序解明が中毒患者の QOL 改善に必須であると考えられる。そこで本研究では、基礎実験から DPAA の中毒症状を明らかにする目的で、DPAA の慢性曝露マウスを作成し、その行動評価を行った。まず、ICR 系雄性マウスに DPAA (1-5 mg/kg/day s.c.) を慢性的に処置し、運動協調性障害を rota-rod 法に従い検討した。その結果、DPAA の投与により用量依存的な運動協調性障害が認められ、投与中止後、経時的な回復が認められた。このことから、慢性的に DPAA を投与することにより運動協調性障害が惹起され、これは可逆的である可能性が示唆された。これらの結果は、臨床において中毒患者が井戸水の摂取を中止することで、症状の改善が認められることと相関する。次に、DPAA の中枢神経系に及ぼす直接的な影響を確認する目的で、1 日齢 ICR 系マウス脳由来神経/グリア共培養細胞および初代培養アストロサイトに DPAA を処置した。その結果、神経/グリア共培養細胞において、1 pM から apoptosis 誘導タンパク質である cleaved caspase-3 が観察され、また、髄鞘の構成成分である myelin associated glycoprotein 免疫活性の減弱が認められた。さらに、初代培養アストロサイトにおいて、アストロサイトの形態変化が認められた。これらの結果から、DPAA が神経系に直接的に作用し、その作用は極めて低用量から引き起こされる可能性が示唆された。
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久保田 万紀子, 大西 真央, 鈴木 寛, 生城 真一, 原口 浩一, 山田 静雄, 加藤 善久
セッションID: Y-18
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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【目的】 異なるタイプのPCBによる血清中サイロキシン(T
4)濃度の低下作用機構を検討した。【方法】 TCDD高感受性C57BL/6系マウスおよびTCDD低感受性DBA/2系マウスに3,3',4,4',5-pentachlorobiphenyl (CB126) (2.5 mg/kg)、2,3',4,4',5-pentachlorobiphenyl (CB118) (50 mg/kg)、2,2',4,4',5,5'-hexachlorobiphenyl (CB153) (100 mg/kg)を投与し、それぞれ4、5、3日後に、血清中総T
4、遊離T
4濃度、肝ミクロゾームの薬物代謝酵素活性、UGTの発現量、血清中PCBおよびその水酸化体濃度を測定した。また、その時に[
125I]T
4を静脈内投与し、血中からの[
125I]T
4のクリアランス、血中[
125I]T
4とトランスサイレチン(TTR)およびアルブミンとの結合率を測定した。【結果・考察】 血清中総T
4および遊離T
4濃度は、C57BL/6系マウスに3種のPCB投与により、またDBA/2系マウスにCB118、CB153投与により有意に低下した。肝臓のethoxyresorufin
O-dealkylase活性はC57BL/6系マウスにCB126、CB118投与により、pentoxyresorufin
O-dealkylase活性はC57BL/6系マウスに3種のPCB投与により顕著に増加した。[
125I]T
4の血清クリアランスおよびUGT1Aの発現量は、C57BL/6系マウスに3種のPCB投与により有意に増加した。[
125I]T
4の分布容積は、C57BL/6系マウスにCB118、CB153投与により有意に増加した。また、血中[
125I]T
4とTTRとの結合率は、CB118投与において著しく低下し、代わってアルブミンとの結合率が増加した。以上、異なるタイプのPCBの血清中T
4濃度の低下には、肝臓のUDP-グルクロン酸抱合酵素活性の増加や、血中T
4とTTRとの結合阻害および血中T
4の組織への移行量の増加がそれぞれ異なった割合で関与していることが示唆された。
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滝口 理恵, 鈴木 寛, 大西 真央, 山田 静雄, 加藤 善久
セッションID: Y-19
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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【目的】 フェノバルビタール(PB)投与による血清中サイロキシン(T
4)濃度の低下作用発現機構やその動物種差について検討した。【方法】 マウス、ハムスター、ラットおよびモルモットにPB (80 mg/kg)をそれぞれ4日間連続投与し、最終投与後1日に血清中の総T
4、遊離T
4および甲状腺刺激ホルモン(TSH)濃度を測定した。また、その時に[
125I]T
4を静脈内投与し、血中からの[
125I]T
4のクリアランス、血中[
125]T
4とトランスサイレチン(TTR)あるいはアルブミンとの結合率、[
125I]T
4の組織分布量を測定した。【結果・考察】 PB投与により、マウス、ハムスター、ラットの血清中総T
4および遊離T
4濃度は有意に低下した。一方、血清中TSH濃度は、ハムスターでのみ有意に低下した。[
125I]T
4の血清クリアランスおよび分布容積は、マウス、ハムスター、ラットで有意に増加した。各対照動物において[
125I]T
4の組織分布量は肝臓で特に高く、PB投与により、マウス、ハムスターおよびラットにおいて肝臓への[
125I]T
4の分布量が有意に増加した。また、肝臓単位重量当たりの[
125I]T
4の分布量はマウスでのみ増加した。また、肝臓のKp値はマウス、ラットで増加し、ハムスターでは増加傾向が見られた。一方、血中[
125I]T
4とTTRあるいはアルブミンとの結合率は、いずれの動物においても変化しなかった。なお、モルモットの血清中総 T
4のほか、いずれの測定値もPB投与により変化しなかった。以上の結果から、マウス、ハムスター、ラットにおいて、PB投与による血清中T
4濃度の低下は、血中から肝臓へのT
4の移行量の増加に起因することが示唆された。現在、PB投与による肝実質細胞への[
125I]T
4の取り込み量および肝臓におけるT
4トランスポーターの発現量の変動についても検討している。
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本多 達也, 本田 勝也, 山口 知里, 西村 友成, 長谷川 美奈, 西田 敦之, 乾 俊秀, 北村 和之
セッションID: Y-20
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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【目的】妊娠母体における血液の動態や性状には経時的な生理的変化が生じるが、これらの変化が非妊娠の状態に比べ、化合物の薬理学的あるいは毒性学的な反応を増強あるいは減弱する可能性が考えられる。したがって、妊娠の経過に伴った血液学・血液生化学データの変動を的確に把握することは薬物による生殖発生毒性を評価する上で重要であるが、妊娠ラットに関するこれらデータの報告は少なく、更なるデータの蓄積が望まれる。そこで、本研究では妊娠ラットを用いて経時的な血液学・血液生化学検査を実施し、非妊娠ラットおよび既知の報告との比較検討を行った。
【材料および方法】12週齢のCrj:CD(SD)IGS系雌雄ラットを交配し、交尾が確認された雌ラットを妊娠0日として、妊娠7日、14日、17日および21日に腹部大動脈より血液を採取し、血液学・血液生化学検査を行った。また、同一週齢の非妊娠ラットについても同様の検査を行った。
【結果】妊娠7日の検査値は、非妊娠ラットの検査値とほぼ同様の値であったが、妊娠14日以降、検査値に変動のみられる検査項目が散見され、妊娠21日では非妊娠ラットと比べて検査値の著しい違いのある検査項目が多数認められた(血液学検査:貧血、網状赤血球百分率およびリンパ球百分率の減少、プロトロンビン時間および活性化部分トロンボプラスチン時間の延長、好中球百分率およびフィブリノーゲン量の増加、血液生化学検査:アルカリホスファターゼ活性の低下、ナトリウム、クロール、カルシウム、アルブミン、アルブミン/グロブリン比およびグルコースの減少)。これらの変動について考察を加えるとともに、これまでに報告のない検査項目の結果についても合わせて報告する。
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黒木 宏二, 猶原 兼人, 河内 真美, 青木 泰啓, 田中 浩二, 安場 正子
セッションID: Y-21
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
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【目的】ラットを用いた免疫毒性試験において、T細胞依存性抗体産生能、血液、病理及び白血球サブセットなどの検査を同一の個体で実施できれば有用と考えられる。しかし、抗体産生能評価のためのT細胞依存性抗原の投与が薬剤により誘発される免疫毒性の評価に影響を及ぼすか否かについては明らかでない。そこで、Cyclophosphamide(CPA)を用いて免疫毒性試験を実施し、ヒツジ赤血球(SRBC)静脈内投与が試験成績に及ぼす影響を検討した。
【方法】6週齢のCD(SD)IGS系雄性ラットを用いて、媒体+SRBC処置群、媒体+SRBC非処置群、CPA+SRBC処置群及びCPA+SRBC非処置群の4群を設け、媒体あるいはCPAの4.5mg/kg/日を4週間反復経口投与した。剖検日の6日前にSRBC処置群にはSRBC(2×10
8cell/body)を、SRBC非処置群にはSalineを静脈内投与した。媒体あるいはCPAの最終投与の翌日に、ELISA法による抗SRBC IgM抗体価の測定、血液学的検査、血液化学的検査、剖検、器官重量、病理組織学的検査及び脾臓の白血球サブセット測定を実施した。
【結果】CPA+SRBC処置及びCPA+SRBC非処置の両群において、リンパ球数及び白血球数の低下、血清gamma globulinの低下、脾臓重量の低下、脾臓、下顎リンパ節及び腸間膜リンパ節の濾胞萎縮が認められ、白血球サブセット解析では脾臓のCD3
+CD4
+ Th細胞数、 CD3
+CD8
+ Tc細胞数、CD45RA
+ B細胞数、NKR-P1A
+ NK細胞数、CD11b
+ED1
+ monocytes/macrophages数及びCD11b
+ED1
- granulocytes数の低下などが認められた。これら2群の間で、上記CPA投与による変化に特記すべき差異は認められなかった。なお、CPA+SRBC処置群では抗SRBC IgM抗体価の低下が認められた。
【結論】以上、抗体産生能測定のためのSRBC投与はCPAにより誘発された免疫毒性の評価に影響を及ぼさないと考えられた。したがって、抗体産生能とその他の検査項目を同一個体で評価できる可能性が示唆され、今後の試験に応用できるものと考えられた。
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葛西 勇人, 角崎 英志, 寳来 直人, 戸門 洋志, 福崎 好一郎, 永田 良一
セッションID: Y-22
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
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【目的】我々は現在までに,ウシII型コラーゲンをカニクイザルに感作することにより,コラーゲン誘導型関節炎モデル(CIA)を作成し,臨床においても重要な関節面における腫脹をモニタリングすることにより薬効評価を行ってきた.本報告では,指骨関節における腫脹と骨代謝マーカーを含む生化学パラメータとの相関を調べた.【方法】3から7才の雌性カニクイザル90匹を用いて,ウシII型コラーゲンとFreund完全アジュバントを等量混合したエマルジョンの皮内投与により感作した.1回目感作の3週間後に1回目感作と同様の方法で2回目の感作を行い,さらに2週間経過を観察しCIAモデルを作成した.この誘導期間において,指骨楕円面積,腫脹score,体重,尿検査,血液学的検査,及び血液生化学的検査を経時的に評価した.なお,指骨楕円面積は前後肢の第1指を除く16指の中位関節を対象に測定し,腫脹scoreでは前後肢の膝,肘関節を含み主な可動関節64関節を対象にした.【結果】感作前の平均指骨楕円面積を基準にして,誘導期間終了後に105%以上を示した個体は75/90例(83%)であった.腫脹score観察においては86/90例(96.0%)で1ヶ所以上の関節に腫脹が観察された.指骨楕円面積と腫脹scoreとの相関をみたところ,高い相関がみられ(R=0.800),血清ALP及び尿中NTxとも高い相関がみられた.一方,炎症マーカーとして知られているESR及びCRPとは明らかな関連はなかった.【考察】臨床においても関節リウマチにおける骨代謝マーカーの意義は未だ十分に知見が集まっていない.しかしながら,本研究において指骨楕円面積が骨形成マーカーである血清ALP,及び骨吸収マーカーである尿中NTxと高い相関性を有したことから,骨代謝が高代謝回転型になっていることが示唆された.また,指骨楕円面積と高い相関がみられた腫脹score,血清ALP及び尿中NTxが薬効評価に有用なパラメータになると考えられた.
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横山 篤, 横山 博士
セッションID: Y-23
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
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生体内ではL-カルニチンが主でD型は大変微量である。脂肪燃焼作用もL型が持つ生理作用でD型には存在しない。しかし、構造式は類似しており培養ラット胎児の発育にどのような影響を持つか興味のあるところである。米国ではカルニチンは注目されているダイエット食品であり、若い女性が大量集中摂取することで、その弊害が問題になっている。サプリメント症候群からはじまって究極は拒食症まで進む危険性がある。今回、我々はD-カルニチンの培養胎児への影響を確認した。培養ラット胎児は48時間培養とし、D-カルニチンの処理用量は500、1000、2000μg/mlとした。培養ラットの発育指標は胎児身長・胎児体重・総体節数・胎児心拍動数および外表奇形とした。心拍動数はD-カルニチン最高用量(2000)処理群で一時停滞したが直ぐに回復した。胎児慎重・体重・総体節数は対照群とカルニチン群で差はなく、外表奇形も確認されなかった。以上の結果、脂肪燃焼促進作用のないD-カルニチンには培養胎児への毒性作用は確認されなかった。
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何 希君, 江尻 紀子, 中山 裕之, 土井 邦雄
セッションID: Y-24
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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Although CYP expression which is involved in drug metabolism has been suggested to be influenced by some physiological status, such as pregnancy and lactation, the details remain poorly known. In the present study, the alterations of CYPs expression during pregnancy and postpartum in the F344 rat liver were investigated by Western blot analysis and immunostain. Total nine anti-rat CYPs antibodies (CYP1A1, CYP2B1/2, CYP2C6, CYP2C12, CYP2D1, CYP2D4, CYP2E1, CYP3A1, and CYP4A1) were used. In comparison with age-matched non-pregnant control rats, there were significant decreases in hepatic levels of CYP2B2, CYP2C6 and CYP4A1 in mid-pregnancy (day 13) and CYP2B2, CYP2C6, CYP4A1, CYP1A1, CYP2B1 and CYP2E1 in late-pregnancy (day 19). By postpartum 28 day (PPD 28), however, the hepatic CYPs down-regulated during pregnancy reverted to the same level of control rats. The expression of CYP2C12, CYP2D1 and CYP3A1 remained unchanged even by pregnancy. CYP2D4 was not detectable in all the liver samples examined. The results of immunostain revealed that CYP1A1 was expressed in endothelial cells of both sinusoids and veins in the liver. The other CYPs were mainly expressed in centrilobular hepatocytes. There were no differences in the distribution and intensity of the expression of the CYPs between pregnant and non-pregnant rats. These results provide the possibility that pregnant and lactational animals are more susceptible to some toxic substrates which are metabolized by CYPs.
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岸田 知行, 高島 佳代子, 武藤 信一, 相馬 晋司, 笠原 寛子, 小林 冴香, 本川 佳幸, 田中 智, 筒井 将, 林 守道, 田村 ...
セッションID: Y-25
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
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【目的】安全性試験に用いられるラットの系統は日米欧間でしばしば異なっている。SD及びWistarラットは特に使用頻度の高いクローズドコロニーであり,一般的に両系統間の体重,生存率及び自然発生腫瘍に関する差異は知られているが,毒性発現に関して重要なファクターである薬物代謝の差異に関する報告は少ない。今回,我々はPhenobarbital(PB)を用いて,SD及びWistarラットにおける肝薬物代謝の系統差を検討した。
【方法】8週齢の雄性SDラット(Crj:CD(SD) IGS)及びWistarラット(BrlHan:WIST@Jcl(GALAS))にPBを3日間投与(i.p.,60 mg/kg/日)した後,肝臓における薬物代謝酵素(CYP1A1, 1A2, 2B1, 2C6, 2D2, 3A1, 3A2及び4A1, UGT2B1, GSTYa1及びYa2)のmRNA量を測定した。また,肝ミクロソーム分画における薬物代謝活性(Testosterone 6β, 7α, 16α, 16β, 2α及び2β水酸化,EROD (7-ethoxyresorufin-
O-deethylase), MROD, PROD, Diazepam C3水酸化及びN脱メチル化,β-Estradiol 3-OH-及び17β-glucuronide)を測定した。併せて,肝臓の病理組織学的検索を実施した。
【結果・考察】対照群では,WistarラットでのCYP1A1及び3A2, UGT2B1の発現量が高かった。PB投与群では,両系統共に文献的に知られている薬物代謝酵素群が誘導され,CYP1A1及び3A2, UGT2B1の発現量は対照群と同様にWistarラットで高値を示した。病理組織学的には,両系統共に電顕観察で酵素誘導を示唆する肝細胞内滑面小胞体の増加が小葉中心性に観察され,Wistarラットで強く発現する傾向が認められた。一方,発現量に系統差が認められた薬物代謝酵素を反映する代謝活性(EROD, MROD, Diazepam C3水酸化,β-Estradiol 17β-glucuronide)には明らかな系統差は認められなかった。以上,薬物代謝活性には顕著な系統差はみられなかったが,CYP1A1及び3A2, UGT2B1の発現量に系統差が認められたことから,これらの薬物代謝酵素が飽和に達するような領域ではラットの系統によってトキシコキネティクス及び毒性所見に差が生じる可能性が考えられた。
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宮脇 出, 堀江 泰志, 河内 眞美, 三瀬 いずる, 船橋 斉, 田中 浩二, 安場 正子
セッションID: Y-26
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
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【目的】クロバザム(CLB)はラットへの短期投与で甲状腺重量増加を,長期投与で甲状腺腫瘍を誘発するが,我々はこれらの変化に先立ち肝重量が増加することを報告している(Toxicology Letters,2003).肝重量の増加は肝薬物代謝酵素誘導に基づくものと考えているが,詳細な検討結果はない.今回,CLBの反復投与によって起こる肝重量増加と肝薬物代謝酵素誘導の関係について経時的に検討したので報告する.
【方法】5週齡のSD系雄性ラットにCLB 400mg/kg/日を反復経口投与し,投与後1, 3, 7, 14, 28日並びに休薬7, 14日にラットをエーテル麻酔下で放血致死させて,肝臓を摘出した.摘出した肝臓について,重量測定後,病理組織学的検査及びcytochrome P450 (CYP)含量の測定を行った.さらに肝臓の一部からtotal RNAを抽出しCYP分子種のmRNA発現解析を行った(PAM chip, Olympus).
【結果及び考察】CLBの反復投与により肝重量増加及び小葉中心性の肝細胞肥大といった変化に加え,肝CYP含量の増加が認められた.また,CYP分子種のmRNA発現解析の結果,初回投与後に広範なCYP分子種のmRNAが一過性に発現し,投与を重ねることで,そのうちの幾つかの分子種(CYP2B1, 3A1, 3A2)の発現が増強される傾向が認められた.これに対し,休薬により肝重量の増加は認められなくなり,CYP含量も減少した.さらにCYP分子種のmRNA発現は対照群と同等又はそれ以下に抑えられ,CYP含量の減少と相関していた.以上のことから,CLBの反復投与によって起こる雄ラットの肝臓重量の変化は,第I相薬物代謝酵素の誘導に一部起因することが明らかとなり,それらの発現は転写レベルで調節されている可能性が示唆された.
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高石 雅樹, 栗田 尚佳, 鈴木 純子, 遠山 千春, 佐藤 雅彦, 永瀬 久光
セッションID: Y-27
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
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【目的】Benzo[
a]pyrene (B[
a]P) はタバコの煙や加熱処理した食品等、環境中に広く分布する強力な化学発がん物質であり、P 450により代謝活性化されてDNAに結合し、発がんに至るといわれている。また、その際フリーラジカルを生じることも知られている。一方、金属結合タンパク質であるメタロチオネイン(MT)は、フリーラジカル消去作用を有することが知られている。そこで、B[
a]Pの遺伝子損傷に対するMTの防御的役割についてMT-I/II欠損マウスを用いて検討した。【方法】10週齢雄のMT-I/II欠損マウスおよびその野生型マウスにB[
a]Pを0, 30, 62.5, 125, 250, 500, 750 mg/kg経口投与し、その48時間後の末梢血を尾静脈より採取して小核試験を行った。また、MT誘導能を有するZnSO
4(50, 100μmol/kg)を24時間毎に計2回、皮下投与し、その24時間後にB[
a]Pを250 mg/kg経口投与し、48時間後の末梢血についても小核試験を実施した。【結果および考察】MT-I/II欠損マウスおよび野生型マウスの末梢血中小核誘発頻度は共にB[
a]Pの投与量に依存して増加した。しかしながら、両マウスを比較すると、B[
a]P 250, 500, 750 mg/kg投与群においてMT-I/II欠損マウスの方が、野生型マウスに比べて小核誘発頻度の有意な増加が認められた。さらに、野生型マウスにおいて、B[
a]Pによる小核誘発頻度の増加はZnSO
4の前投与によって有意に抑制したが、MT-I/II欠損マウスでは、ZnSO
4を前投与しても小核誘発頻度は減少しなかった。 以上の結果より、MT-I/II欠損マウスはB[
a]Pの遺伝子損傷に対して高感受性であることが明らかとなった。また、ZnSO
4前投与によって野生型マウスのみで遺伝子損傷の抑制が認められたことから、ZnSO
4の前投与が示すB[
a]Pの遺伝子損傷の軽減効果は、あらかじめ誘導されたMTによるものであることが示唆された。
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本 光喜, 梅村 隆志, 岡村 美和, 六車 雅子, 樫田 陽子, 町田 登, 三森 国敏
セッションID: Y-28
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
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【目的】我々は昨年の本会で、マウス非遺伝毒性肝発がん物質であるdicyclanil(DC)の発がん過程における酸化的ストレスの関与の可能性について報告した。今回、その関与の機序を更に検討するため、二段階肝発がんモデルを用いた
in vivo実験、およびDCによる活性酸素種(ROS)の産生を明らかにするための
in vitro実験を実施した。【方法】正常マウスないしdimethylnitrosamine (DMN)によるイニシエーション後に部分肝切除(PH)を施したマウスに、0、1500 ppmのDCを13および26週間混餌投与し、その肝臓について病理組織学的検索、代謝・酸化的ストレス関連遺伝子の発現解析、酸化的DNA損傷マーカーである8-hydroxydeoxyguanosine (8-OHdG)ならびに脂質過酸化レベルの指標としてチオバルビツール酸反応物質(TBARS)の測定を実施した。
in vitroの検討では、マウス肝ミクロソームとDCを反応させた後のROS産生量を測定した。【結果・考察】
in vivoの検討では、DMN+DC群ではgamma-GT陽性巣数および総面積の顕著な増加が認められ、総面積は投与13週目に比べ26週目でさらに高値を示した。遺伝子発現では、DC群およびDMN+DC群で
CYP1a1、
Txnrd1、
Ogg1等に有意な発現増強が各時点でみられ、DMN+DC群で最も高値を示していた。TBARSレベルもDMN+DC群が高値を示したが、経時的増加はみられなかった。8-OHdGレベルは、13週目ではDC群で上昇傾向、DMN+DC群では有意な上昇が認められた。26週目については測定中である。
in vitroの検討では、DCの0.3 mMから有意なROS産生量の増加がみられた。以上から、DCによる肝発がんには、その代謝過程で生じたROSによる酸化的ストレスが関与する可能性が示唆された。
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佐怒賀 宣之, 赤木 洋祐, 高木 文雄, 横尾 清文, 和久井 信
セッションID: Y-29
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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3,3',4,4',5-pentachlorobiphenyl (PCB126)は煙突の煤煙や固定廃棄部・土壌中に高濃度に分布し、また他のダイオキシン類に比べその生物濃縮性が高いことが知られている。さらに、胎盤・授乳を介して次世代に移行するため、次世代への影響が示唆されている化学物質である。我々はPCB126胎生期暴露がN-methyl-N-nitrosourea (MNU)誘発ラット前立腺発癌へいかなる影響をおよぼすかについて検討した。SD(slc)ラット妊娠13?19日目までPCB126を7.5ug/kg/day(7.5ug群)、250ng/kg/day(250ng群)、2.5ng/kg/day(2.5ng群)、25pg/kg/day(25pg群)、 0ng/kg/day(対照群)連日経口投与を行った。出生後、8週齢から50mg/kg/day Cyproterone acetateを3週間連続経口投与後、100mg/kg/day Testosterone propionateを3日間連続皮下投与後、45mg/kg MNUを単回尾静脈投与を行った。その2週間後から6週間ごとに4週間ごとにTestosteron propionateシリコンチューブを背部皮下に埋設した。ラットは生後75週齢で安楽死後剖検した。前立腺癌発癌率は対照群で最大を示した。これに対し、PCB126胎生期暴露群ではPCB126暴露用量(7.5ug群<250ng群<2.5ng群<25pg群)と相関して発癌率の有意な減少が認められた。本検討から、MNU誘発ラット前立腺発癌が胎生期PCB126暴露によって抑制されることが明らかとなった。
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沢田 啓, 谷口 恵子, 高見 健治, 朝日 知
セッションID: Y-30
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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薬物起因性phospholipidosis(PLsis)は細胞内にリン脂質が過剰に蓄積する現象と定義され、多くの薬剤もしくはその代謝物により引き起こされる。本研究では、PLsis誘発メカニズムの解明並びに特異的マーカー遺伝子を用いた
in vitro評価系の構築を目的として、12種のPLsis誘発化合物存在下でヒト肝癌由来細胞株であるHepG2細胞を培養し、DNAマイクロアレイ解析を行った。
その結果、リソソーム酵素の活性・輸送の阻害及びリン脂質・コレステロール合成の促進等のPLsisとの関連を示唆する遺伝子の発現変動が種々の薬物で共通に認められ、PLsisの発現には従来知られているメカニズム以外に複数の要因が関与しているものと考えられた。さらに、PLsis誘発化合物で共通の挙動を示しかつ発現変動率の高い遺伝子を抽出し、リアルタイム定量PCR測定で精査することにより、12のPLsisマーカー遺伝子を獲得した。これらのマーカー遺伝子の平均変動率(遺伝子スコア)と電子顕微鏡学的検査によるPLsis様の組織学的変化(ミエリン様構造物)の程度との間には良好な相関が認められたことから、遺伝子スコアはPLsis誘発ポテンシャルを推測する指標となることが示された。また、構造の類似した一連の化合物を評価したところ、ポテンシャルが低い化合物に共通する構造上の特徴が見出され、本評価系で得られたデータは化合物の構造修飾に活用できる可能性が示された。
以上のように、種々のPLsis誘発化合物の培養細胞に及ぼす影響をtoxicogenomics解析することにより、PLsis発現メカニズムの仮説を提唱でき、バイオマーカーも得ることができた。マーカー群を利用した
in vitro評価系は、少量の化合物でPLsis誘発ポテンシャルを感度良く簡便に測定できる試験系であり、創薬研究の早期段階において低ポテンシャル化合物の探索並びに化合物最適化に活用可能と考えられる。
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大塚 亮一, 武田 真記夫, 山口 悟, 林 宏一, 竹内 幸子, 桑原 真紀, 高橋 尚史, 千葉 裕子, 小坂 忠司, 原田 孝則
セッションID: Y-31
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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内分泌攪乱作用が示唆されているメトキシクロル(MXC)の胎児・新生児期暴露(経胎盤,経乳あるいは経餌暴露)を受けた雄性ラットの成長過程における前立腺の経時的変化を検索するため,一世代繁殖試験を実施した。Sprague-Dawley(Jcl:SD)ラットの母動物にのみ交配2週間前から授乳期までMXCを0,30,100,300,1000ppmの濃度で混餌投与し,同母親から得られた新生児ラットの雄を供試動物とした。各用量群の新生児ラットは,離乳後から正常な基礎飼料を給餌し,10および52週齢時に達した時点で前立腺の重量測定および病理組織学的検索を実施した。また,1000ppm群と対照(0ppm)群の前立腺に関してはマイクロアレイ解析を行った。 前立腺の重量測定では,10週齢時には有意な変化はみられなかったが,52週齢時において300および1000 ppm群の前立腺重量が対照群に比べ有意に増加した。しかし、病理組織学的検査ではいずれの週齢時においてもMXC暴露の影響と考えられる異常は特に認められなかった。 マイクロアレイ解析では,10週齢時において10前後の遺伝子が対照群に比べup-またはdown-regulateされ,52週齢時においては25の遺伝子がup-regulate,15の遺伝子がdown-regulateされていた。また,glutathione S-transferase,calmodulin等の遺伝子は両検査時において有意な変動を示した。以上のように,胎児・新生児期に高用量のMXC暴露を受けた雄性ラットでは,52週齢時において前立腺重量が対照群に比べ有意に増加した。また,マイクロアレイ解析では幾つかの遺伝子が10および52週齢時で同様の変動を示したことから,MXCの胎児・新生児期暴露は成長過程の前立腺の遺伝子発現系に対し持続的に影響を及ぼすことが示唆された。その結果、遺伝子発現系における恒常性の維持が撹乱され,10週から52週齢時の成熟期において前立腺肥大という形で顕在化した可能性が考えられた。現在,各々の遺伝子に関する詳細な解析を実施している。
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長谷川 美奈, 長谷川 陽子, 竹中 重雄, 桑村 充, 津山 伸吾
セッションID: Y-32
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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(目的)リン脂質症は医薬品の開発において問題となることが多く,そのスクリーニング手法が求められている.そこで,我々は,近年メタボノミクス解析の有用なツールとして注目されている,フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析装置(FT-ICR-MS)を用い,薬剤誘発性リン脂質症ラットの尿メタボノミクス解析を実施し,その有用性について検討した.(方法)全身諸臓器にリン脂質の蓄積を誘発する抗不整脈薬amiodarone 300 mg/kg を雄性ラットに3日間経口投与し,経時的に尿を採取した.採取した尿5μLを0.1%蟻酸アンモニウムを含む溶媒(アセトニトリル:水=1:1)で20倍希釈し,インフュージョンによるポジティブおよびネガティブイオン測定を実施した.得られたMSスペクトルから多変量解析を行い,さらに,媒体対照群および薬剤投与群間において変動した分子の同定ならびに構造解析を試みた.(結果および考察)ネガティブイオンのMSスペクトルは投与とともに変動し,主成分分析によって異なることが示された.さらにNMRを用いたリン脂質症尿メタボノミクス解析で報告のある,フェニルアセチルグリシン(PAG)の増加を確認した.加えて,それ以外の分子の増減も認められた.現在,それらの構造解析を試みている.以上の結果より,FT-ICR-MSは,その質量精度の高さおよび簡便性からリン脂質症メタボノミクス解析の有用な手法であり,バイオマーカー探索も可能であることを明らかにした.
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高橋 勉, 廣瀬 健一郎, 永沼 章
セッションID: Y-33
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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アドリアマイシン(ADM)は様々な悪性腫瘍の治療に幅広く用いられている抗癌剤である。主な作用機序としてはDNAへのインターカレーションによる核酸合成の阻害やトポイソメラーゼIIの阻害などが知られているが、これまでに認められている作用は多岐にわたり、不明な点も多い。また、ADMを用いた癌の化学療法においては癌細胞のADMに対する耐性獲得が大きな障害となっている。耐性獲得機構としてはADMの細胞外排出に関わるトランスポーターの過剰発現などが知られているが、既知の機構だけでは説明できない耐性細胞も存在する。したがって、ADMを用いた癌治療を効果的かつ安全に行うためにも、ADMの毒性発現機構の全容解明が不可欠である。そこで、本研究では遺伝学的解析が容易で全ゲノム配列が決定している出芽酵母を用いてADMに対する感受性を決定する因子のスクリーニングを行った。出芽酵母は約6000の遺伝子を持つが、そのうち生存に必須な遺伝子を除く約5000種の遺伝子をそれぞれ欠損させた酵母を1株ずつADM存在下で培養したところ、欠損によって酵母にADM耐性を与える遺伝子105種、高感受性を与える遺伝子254種がそれぞれ同定された。欠損により酵母にADM耐性を与える遺伝子の産物には、細胞骨格・エンドサイトーシスやユビキチンプロテアソーム経路に関わる蛋白質が多数含まれていたが、これらの蛋白質とADM耐性との関係についての報告はされていない。また、欠損により酵母のADM感受性を増強させる蛋白質として、これまでに報告のあるDNA修復や電子伝達系に関わる機構以外にも、細胞内情報伝達系に関わる因子やリボソーム蛋白質などが同定された。本研究結果は、これまで予想されなかった多くの細胞内因子がADM毒性に関与していることを示しており、ADM毒性発現機構の全容解明に有用な知見を与えるものである。現在、各々の細胞内因子が関与するADM毒性発現機構を解析中である。
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赤木 洋祐, 佐怒賀 宣之, 高木 文雄, 横尾 清文, 武藤 朋子, 金井 好克, 遠藤 仁, 和久井 信
セッションID: Y-34
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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ダイオキシン類による汚染は地球規模で広がっているが、そのうちCoplanar-polychorinated biphenyls (Co-PCBs) は水・堆積物・魚・野生動物、およびヒトの脂肪組織・ミルクならびに血清を含む地球の生態系のほとんどすべての構成要素に汚染物質として検出されているまた他のダイオキシン類に比べその生物濃縮性が高いことが知られている、さらに、胎盤・授乳を介して次世代に移行するため、次世代への影響が示唆されている。我々はPCB126胎生期暴露が成長期のラット精子形成サイクルにどの様な影響をおよぼすかについて検討した。SD(slc)ラット妊娠13?19日目までPCB126を7.5ug/kg/day(7.5ug群)、250ng/kg/day(250ng群)、0ng/kg/day(対照群)連日経口投与を行った。出生後、7週齢、17週齢に安楽死後に剖検し精巣を剖出した。各精巣はPAS染色を施し、精細管における精子形成サイクルにおけるステージ分類について観察し各対照群と比較検討を行った。生後7週齢・17週齢での体重は各群間で有意差は認められなかったが、精巣重量はPCB126暴露用量と有意な逆相関係を示していた。生後7週齢では7.5ug群のグループ1(ステージ1?4)の出現率の増加が認められた。また、生後17週齢では、7.5ug群のグループ1(ステージ1?4)・グループ3(ステージ9?11)・グループ4(ステージ12?14)、250ng群ではグループ1(ステージ1?4)の出現率の増加が認められた。本検討から、PCB126胎生期暴露が成長期のラット精子形成サイクルに影響を及ぼすことが明らかとなった。
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高木 文雄, 赤木 洋祐, 佐怒賀 宣之, 横尾 清文, 武藤 朋子, 金井 好克, 遠藤 仁, 和久井 信
セッションID: Y-35
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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ダイオキシン類による汚染は地球規模で広がっているが、そのうちCo-PCBs は水・堆積物・魚・野生動物、およびヒトの脂肪組織・ミルクならびに血清を含む地球の生態系のほとんどすべての構成要素に汚染物質として検出されているまた他のダイオキシン類に比べその生物濃縮性が高いことが知られ、さらに、胎盤・授乳を介して次世代に移行するため、次世代への影響が示唆されている。我々はPCB126胎生期暴露が老齢期のラット精子形成サイクルにどの様な影響をおよぼすかについて検討した。SD(slc)ラット妊娠13?19日目までPCB126を7.5ug/kg/day(7.5ug群)、250ng/kg/day(250ng群)、0ng/kg/day(対照群)連日経口投与を行った。出生後、52週齢、90週齢に安楽死後に剖検し精巣を剖出した。各精巣はPAS染色を施し、精細管における精子形成サイクルにおけるステージ分類について観察し各対照群と比較検討を行った。生後52週齢・90週齢での体重および精巣重量は各群間で有意差は認められなかった。生後52週齢では250ng群のグループ1(ステージ1?4)の出現率の増加が認められた。これに対し、生後90週齢では7.5ug群のグループ4(ステージ12?14)の出現率の増加が認められた。本検討から、PCB126胎生期暴露が老齢期のラット精子形成サイクルに影響を及ぼすことが明らかとなった。
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Rafiqul Islam, Promsuk Jutabha, Arthit Chairoungdua, 平田 拓, 安西 尚彦, 金井 好 ...
セッションID: Y-36
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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アミノ酸輸送系B
0は、中性アミノ酸の経上皮輸送を担当するトランスポーターであり、小腸及び腎近位尿細管の管腔側膜に存在するNa
+依存性トランスポーターである。水俣病の起因物質であるメチル水銀は、生体内においてシステインと非酵素的に容易に反応し、メチオニンと類似構造をもつ化合物を生成するため、アミノ酸トランスポーターを介して吸収され、血液組織関門を通過すると考えられている。われわれはすでに、輸送系Lアミノ酸トランスポーターLAT1及びLAT2が、血液・脳関門、胎盤関門に存在し、メチル水銀輸送を媒介することを明らかにした。本研究は、メチル水銀の腸管吸収の分子機序を明らかにするために、最近同定された輸送系B
0トランスポーターB
0AT1をアフリカツメガエル卵母細胞に発現させ、メチル水銀輸送活性を検討した。B
0AT1によるロイシンの取り込みは、メチル水銀-システイン抱合体により濃度依存的に抑制され、そのIC50値はアミノ酸輸送のKm値に比して有意に低く、B
0AT1はメチル水銀-システイン抱合体を高親和性に受け入れることが明らかとなった。B
0AT1によるメチル水銀-システイン抱合体輸送を確認する目的で、アフリカツメガエル卵母細胞に発現させたB
0AT1において、
14C-メチル水銀の輸送活性を測定した。その結果、
14C-メチル水銀単独では輸送されないが、システイン存在下で
14C-メチル水銀がB
0AT1によって輸送されることが示された。このシステイン存在下でのメチル水銀のB
0AT1を介する輸送は、B
0を抑制するインヒビターであるBCH(2-aminobicyclo-(2,2,1)-heptane-2-carboxylic acid)により有意に抑制され、システイン存在下での
14C-メチル水銀のB
0AT1を介する輸送が確認された。本研究によりメチル水銀がシステイン抱合体としてB
0AT1を介して小腸から吸収されることが示唆された。
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藤井 悦子, 鈴木 雅実, 加藤 淳彦, 唐澤 弥生, 小川 友美恵, 足立 健児, 杉本 哲朗
セッションID: Y-37
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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我々は病理学的な免疫毒性評価技法として、リンパ系組織の免疫組織化学的ならびに酵素組織化学的解析に適したperiodate-lysine-paraformaldehyde(PLP)固定とAMeX法によるパラフィン包埋を組み合わせたPLP-AMeX法を報告してきた。今回、本技術を骨ならびに骨髄の評価に応用するためにPLP-AMeX法にEDTAによる低温脱灰を組み合わせた、PLP-EDTA-AMeX法を試みた。ラットの大腿骨を骨幹から遠位骨端にかけて採取し、4˚CでPLP固定液にて固定後、-5˚Cethylenediaminetetraacetic acid-glycerol(EDTA-G)溶液にて脱灰し、AMeX法にてパラフィン包埋した。パラフィン薄切標本を作製し、HE染色ならびに各種の酵素組織化学的ならびに免疫組織化学的染色を施した。HE染色標本では組織構築の保持が良好であり、骨組織ならびに骨髄組織の詳細な組織学的検索が可能であった。酵素組織化学的検索ではtartrate-resistant acid phosphataseおよびalkaline phosphataseの活性が容易に検出された。免疫組織化学的染色法においては抗ED-1、α-smooth muscle actin、fibronectinおよびtype IV collagen 抗体に加え、通常のパラフィン包埋標本では検出されないPTH/PTHrP receptor抗体で、それぞれ特異的な陽性反応が観察された。以上の結果からPLP-EDTA-AMeX法は形態の保持が良好であるとともに、酵素組織化学的ならびに免疫組織化学的解析に適した組織処理法であり、病理学的な骨および骨髄の検索に有用な標本作製技法と考えられた。
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石井 雄二, 梅村 隆志, 西川 秋佳, 神吉 けい太, 黒岩 有一, 岡野 圭太, 中澤 裕之, 広瀬 雅雄
セッションID: O-1
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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【目的】たばこ煙やコーヒーに含まれるカテコールは、NOを効率的に消去し、その過程においてラジカル種を生成することが知られている。本研究では、NO産生による肝障害のモデルとしてアセトアミノフェン(APAP)を用い、マウス肝障害に対するカテコール併用投与の影響について検討した。【方法】<実験1>NOとカテコールの反応におけるラジカル種の同定を、DMPOをトラップ剤としてESRにより実施した。また反応中に生成すると考えられるsemiquinone radicalの測定を試みた。<実験2>雄7週令のICRマウスに0あるいは0.8%カテコールを混飼投与し、投与後2週間目にAPAP を0、150、300 mg/kgの用量で単回腹腔内投与した。投与後1.5、4、24時間後に血清AST、ALT活性を、肝臓DNA中の8-hydroxydeoxyguanosine (8-OHdG)量をHPLC-ECDにより、還元型グルタチオン(GSH)量を蛍光化試薬により測定した。また、nitrotyrosineの免疫染色により、その生成を比較検討した。【結果及び考察】<実験1>NOとカテコールの反応により、hydroxyl radicalおよびsemiquinone radicalが生成することを確認した。<実験2>血清AST、ALT値はカテコール、APAP 300 mg/kg併用投与群でカテコール単独群に比べ早期に上昇し、4時間以降では有意な上昇が見られた。また、肝の8-OHdG量はこの群においてのみ、投与後24時間目に無処置群に比べ有意に上昇した。GSHはすべてのAPAP投与群で同程度に低下し、併用投与群では投与後4時間でAPAP単独群に比べnitrotyrosine生成の増加が観察された。これらのことから、APAPによる肝障害発症下ではカテコールはNOを介した酸化的ストレスによりAPAPの毒性を増強し、さらには酸化的DNA損傷を誘発することが明らかとなった。
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馬 成俊, 前田 奈穂子, 中岡 きくよ, 水町 涼治, 石井 三和子, 押方 孝文, 今泉 真和, 直 弘, 西 勝英
セッションID: O-2
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
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慢性肝臓病は肝炎ウィルス、アルコール、感染、寄生虫など、さまざまな原因によって引き起こされることが知られている.慢性肝臓病の最終点と考えられている肝硬変は,日本では約30万人の患者がいると推定されている.現在,肝硬変を改善することはできないが,タンパク質の合成能力などを高めることにより肝機能の低下を少しでも遅らせ,慢性肝臓病の進行を遅らせることは可能と考えられている. 我々は,SDラットにチオアセトアミド(TAA)を16週間連続腹腔内投与し,肝線維症モデルを作製した.本モデルにおいて肝線維化に対する評価を体重,血清GOTとGPT,門脈圧及び肝臓の病理組織学的変化を指標に行うと共に,同時に肝庇護剤プロへパールを16週間強制経口投与してその作用を検討した.
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勝谷 成男, 青木 豊彦
セッションID: O-3
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
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ラットに種々の肝毒性物質を投与し,1H-NMRによるメタボノミクスの有用性について検討した。8週齢の雄のCrj:CD(SD)IGSラットに,ガラクトサミン(GAL)の500 mg/kg,メチレンジアニリン(4,4'-diaminodiphenylmethan: DAPM)の250 mg/kgまたはクロフィブレート(CLO)の500 mg/kgを,GALは腹腔に単回投与し,DAPMおよびCLOは単回経口投与した。対照群には媒体を同様に投与した。投与2, 3および5日の血液サンプルについて生化学的検査を行うとともに,尿を投与前日から投与5日まで経時的に採取し,1H-NMRスペクトル測定を行った後,得られたNMRスペクトルの多変量解析を実施した。また,投与5日に動物を剖検し,肝および腎について病理組織学的検査を行った。血液生化学的検査では,GALおよびDAPM投与群において投与2日よりALP,ALT,AST,GGTおよび総ビリルビンの著明な増加がみられ,CLO投与群ではALTとASTのわずかな増加が認められた。病理組織学的検査では,GAL投与群で肝細胞の壊死に伴う諸変化が,DAPM投与群では胆道系への障害が認められた。CLO投与群では変化は認められなかった。尿の1H-NMRスペクトルの主成分分析では,各薬剤投与群ともに対照群とは明らかに異なる変化を示した。また,CLO投与群はGALおよびDAPM投与群と明らかに異なる変化パターンを示し,区別することができた。
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吉川 理恵, 藤川 真章, 山本 利憲, 堀井 郁夫
セッションID: O-4
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
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近年医薬品開発における安全性評価は、多種類の化合物を短期間に評価することが求められており、
in vivoの毒性を反映する
in vitroスクリーニング系の確立が必要とされている。前回,医薬品開発において問題視される肝毒性を標的とし、肝細胞における毒作用のスクリーニング系確立のためのbiomarker探索を目的として、初代培養肝細胞のプロテオミクス解析を行ない,ミトコンドリアに存在する代謝関連タンパク質や酸化ストレス関連タンパク質の変動を認めたことを報告した。今回,肝毒性を惹起することで知られている各種化合物の単回投与ラット肝細胞を用いて酸化ストレス関連タンパク質の免疫組織学的検出を試み,
in vitro プロテオミクス解析の結果と
in vivo病理組織学的および免疫組織学的検索結果を比較することにより
in vitroおよび
in vivo肝毒性の発現の相違を比較検討した。その結果,投与後24時間において,アセトアミノフェンおよびテトラサイクリン投与肝において,化合物に特徴的な肝毒性を再現することができた。また,全ての群において発現の増減が共通する酸化ストレス関連タンパクはみられなかったが,いずれの化合物を投与した肝細胞においても投与後6時間より何らかの酸化ストレス関連タンパクの増加を認めた。これらの酸化ストレス関連タンパク質はミトコンドリア呼吸の調整に関連して動くことが知られており,形態学的変化は軽微であっても,細胞の機能低下が起こっていることが明らかになった。
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中沢 有紀子, 上野 光一, 竹澤 俊明
セッションID: O-5
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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(目的)初代肝細胞を用いた薬効毒性の評価系は、一般に操作が容易な単層培養系が用いられているが長期の機能維持は困難である。スフェロイド等の三次元培養系は長期間にわたり機能維持できるが、操作が煩雑で普及していない。上記の問題点を解決するため、竹澤らは優れた強度とタンパク質透過性を有した「1型コラーゲンゲル薄膜」培養担体を開発した。ゲル薄膜をプレート底面からピンセットで剥離できるので、細胞底面側からの栄養供給、担体裏面への細胞培養や担体を介した薬物透過の解析等が可能になる。しかし、ラット初代肝細胞については、ゲル薄膜を用いた至適な機能維持培養法が確立されていなかったので、本研究では種々の細胞外マトリックス成分よりゲル薄膜を作製し毒性評価に有用な肝細胞培養系の創出を試みた。
(方法)コラゲナーゼ灌流法で調製したラット初代肝実質細胞を各種細胞外マトリックス成分(1型コラーゲン、4型コラーゲン、マトリゲル)のゲル薄膜上に播種して、経時的に位相差顕微鏡による形態観察、蛍光染色による生死判定、およびアルブミン分泌量測定を行った。また、アセトアミノフェン添加による肝毒性を評価した。
(結果および考察)肝細胞は、1型コラーゲンおよびマトリゲルのゲル薄膜上では4日目以降にそれぞれ非実質細胞の増殖あるいは球状細胞の凝集が進行して肝実質細胞の生存率が低下したが、4型コラーゲンゲル薄膜上では培養9日目までコロニーとして成長し続け肝実質細胞の良好な形態が維持され、アルブミン分泌量は培養9日目において他群に比べ有意に高かった。また、プラスチック製培養皿と比較すると4型コラーゲンゲル薄膜上の肝細胞は10 mM 以下のアセトアミノフェンでは肝細胞障害性も低く抑えられ、薬物特異的な肝障害評価に応用できることが示唆された。
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吉田 緑, 中江 大, 前川 昭彦
セッションID: O-6
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
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ブロッコリー等に含まれるIndole-3-carbinol (I3C)はエストロゲン様作用を示さないもののラットの子宮癌を促進し、その機序としてI3Cが肝臓中のCYP1A1, 1A2, 1B1誘導を介してエストロゲン代謝を変調させた結果、17β-estradiol (E2)より強い発がん作用を示す4-hydroxyestadiol (4HE)を増加させる可能性を昨年の本学術年会で報告した。一方、cytochrome P450酵素はホルモン依存性臓器にも存在し、局所のエストロゲン代謝変調がこれらの臓器の発がんへ直接関与する可能性も指摘されている。今回我々はI3C投与がラット子宮にcytochrome P450酵素を誘導する可能性を検索し、肝臓の結果と比較した。2ヶ月齢の雌Donryuラットの卵巣を摘出後、I3Cを500および2000ppm群の濃度で2週間混餌投与し、子宮および肝臓中のCYP1A1、1A2、1B1、3A1および3A2酵素のmRNAあるいは免疫組織化学染色による蛋白の発現を検索した。その結果、I3C投与により肝臓中の1A1、1A2、1B1は誘導されたが、3A1及び3A2の発現は対照群と同様であった。子宮では対照群を含め1B1が強く発現していたが、1A1以外はI3C群と対照群で同様であった。I3C投与により1A1mRNAが増加したものの免疫組織学的な発現は明らかでなかった。肝臓中のestradiol 2-および4-hydroxylase活性ともにI3C投与群で増加した。以上の結果より、I3C投与により子宮のcytochromeP450酵素誘導が1A1を除き認められなかったことから、I3Cによるラット子宮癌促進には肝臓中のエストロゲン代謝変調の影響が大きく、子宮局所における代謝変調の関与は少ない可能性が高いと推察された。
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津田 修治
セッションID: O-8
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
会議録・要旨集
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日本では95年に教育委員会が諸外国の認定制度、特にABTについて検討を始めた。トキシコロジストのモチベイションを高め、試験責任者等のトキシコロジストの質の向上を図り、毒性学を発展させるためにはABTと同等の範囲、レベル、基準を満たすことが必要とされた。認定試験の実施のためにGrand Father制度を導入した。98年から2004年までに7回の認定試験が行われ、2002年からは資格更新手続きが開始され、現在認定トキシコロジストは268名である。また、それまでのCasarett & Doull's Toxicologyに代わり、日本トキシコロジー学会教育委員会編「トキシコロジー」が編集され正式参考図書となった。なお日本トキシコロジー学会認定トキシコロジストの英語名はDiplomate of the Japanese Society of Toxicology (D.J.S.T.)である。2002年3月、厚生労働省の鶴田大臣官房審議官が「申請時に添付する履歴には認定トキシコロジストであることを明記してほしい。可能ならば、安全性評価の責任者は有資格者であることが望ましい」と発言した。これからは、認定トキシコロジストの資格を持つことが試験責任者の資格条件とされ、就職や昇進に有利となると思われる。雇用者にとってもこの制度は採用の客観的評価基準を持つと言うメリットがあろう。社会においても、新薬などの安全性評価において、ABT基準と同等の基準を満たした有資格者が国際的合意に基づく試験法でGLP基準に基づいて行った試験を、同じ有資格者の審査官が評価して世に出すことにより、安全性における国民の理解が得やすくなると思われる。さらに大事なことは、この資格に挑戦することによる、個人の学習意欲の向上と学問的満足感の達成だと思う。その意味で受験資格の門戸は広くしても、試験のレベルは下げてはならないと思われる。
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福井 英夫
セッションID: O-9
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
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Diplomat of the American Board of Toxicology (DABT)認定試験は、American Board of Toxicology Inc.によって運営されている。毒性学の幅広い知識と経験を持った毒性研究者を対象に試験を行ない、合格者をトキシコロジストとして認定する機関である。1979年から昨年までの25年間に約2000名のDABTが誕生している。そのうちアメリカ人以外は約120名(6%)であり、日本人は数名程度である。現在、毒性分野における資格には全世界で多くの種類があるが、日米欧3極で相互承認されている資格はDABTと日本トキシコロジー学会認定トキシコロジスト(DJST)の2種類だけである。ABT試験には4つの特徴がある。
(1)受験資格が曖昧である。受験資格を得るためには、PhD、MS及びBS取得後、各々最短で3、7あるいは10年間の実務経験が要求される。その上で、願書、履歴書、大学院成績証明書及び上司の推薦書等をboard memberに提出し、約4ヶ月かけて受験資格が審査される。1次審査に合格すれば次は筆記試験を受験する。
(2)試験範囲が膨大である。試験はPart A(Toxicity of Agents), B(Organ Systems and Effects), C(General Principles and Applied Toxicology)の3科目に分かれている。試験問題は11冊の毒性テキストから出題される。1科目100問で3時間、2日間で合計9時間の試験を受けなければならない。
(3)試験問題および合格ラインが未公表である。1999年以降の試験問題は公開されていない。また、合格ラインも毎年変動するようであり、明らかにされていない。
(4)DABTの約90%がPhDである。教育レベルの最も高い研究者集団ともいえる。試験統括責任者の質の担保が国際的に求められている。試験統括責任者の質を高め、若手学会員のモチベーションを高める方法として以下の3つを提案する。(1)新薬承認を申請する際、試験統括責任者(GLP試験責任者を含む)は認定トキシコロジストであることを厚生労働省が強く要望する。実際、米国ではGLP試験責任者はDABTであることが多い。(2)厚生労働省のトキシコロジストもJST試験の問題作成及び審査に参画する。現在、ABT試験の問題作成委員長はFDAのDr. Margaret Millerであり、アメリカ国家としてトキシコロジスト養成を考えている。(3)DJSTをDABTと同レベルまで引き上げるためには、少なくとも試験範囲及び試験問題の難易度を同程度にする。
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堀井 郁夫
セッションID: O-10
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
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IART活動の概要:IUTOX・JSTとの関連1996年頃よりIUTOX 理事会の中でToxicologist Certificationが話題になり、1998年に理事会内にTask Force(Chair:Dr.J.Bus & Dr.T.Sato)が新設された。その頃、JSTにも認定制度の必要性が理事会で議論され、2000年のSOT年会の時にJSTとABTの有志が非公式会合を持って相互認定について話し合い、その後ABTとJSTの強調的会合が中心となり、相互認定について討議が重ねられた。2002年にIARTが正式に設立され、JST-ABT間の協定(非公式)はIARTの活動の中に吸収れる事となった。設立当初は6学会(ABT,JST,EUROTOX,ABVT,AST,KST)が加盟した。この段階では、IARTの活動はメンバー学会の寄付により運営された。2003年のIART運営委員会において、今後の運営にある程度のbudgetが必要なことから、Membership fee制度が提案されたが発展途上国の立場等の件を含め合意に達しなかった。2002年前のABTの歴代President(Ken Wallace, Art Craigmill)等はIARTの設立について積極的に取り組んだが、その後のPresident(任期1年ずつ)は関心が薄く本制度の設定は難航した。2003年IUTOX理事会において、IUTOX PresidentのErik Dybingから、IARTが経済的に運営が困難であるならば、IUTOXの活動として吸収してもよいとの助言があり、IART運営委員会において議論した結果、IARTの機能はIUTOXの活動の一部に包括される事となった。
JSTのトキシコロジスト認定制度の国際的な位置付けと将来展望IART設定の討議の間、JSTの認定制度の質の高さに関してアピールを重ね国際的な位置付けの高さは十分認識された。すなわち、JSTの認定制度がABTのものを叩き台として厳正に設定されている事、試験を受ける資格、試験の内容、更新制度等を提示しその認識は確固としたものとなっている。最近、ABTは国際的にメンバーの拡大に力を入れており、IARTの中でABTが他学会の認定者を相互認定するのには消極的である。JSTの認定制度は、ABT他でもその内容が高く評価されているが、両団体のみの相互承認は現段階では困難である。むしろ、JSTの認定制度を国際的に育成する方がよいと考えられる。日本での規制当局はJST認定制度を支援しており、国内の製薬企業やCROでも有資格者が評価される様になったことは、JSTの認定制度が一定の効果を果たしていると考えてよい。IUTOX Task Forceの将来の課題としては、各国の認定団体の相互承認(共通の呼称も含む)を目指しているが、各認定団体の歴史的背景や目標、制度などがかなり異 なるので当面は困難であると考えられているのが現状である。
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井上 達
セッションID: O-11
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
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はじめに:国際トキシコロジー学会連盟(IUTOX)は、その名の通り世界各国のトキシコロジー関連学会組織の連合組織で、トキシコロジストの科学面での国際協力を育み、トキシコロジー領域の科学的知識を全地球規模で確保、普及し、その利用の促進を図り、世界中のトキシコロジストの持続的な育成やその活動の発展を確実なものにするために活動することを目的としている。沿 革:以上のような目標のもとにIUTOXは1980年7月に当初13ヶ国の発起によって設立されている。現在、47ヶ国のトキシコロジー関連組織が加盟しており、政府、企業、ならびに大学等に所属する2万人に達するトキシコロジストを擁する。活 動:目的は前述の通りであるが、トキシコロジーの分野が基礎科学から応用に至る幅広い学際領域を基盤とした実学的領域に属するため、実際に日本のトキシコロジー学会とその会員に求められる活動目標は、米国毒性学会(SOT)や欧州毒性学会などと同様、それら先進諸国のトキシコロジー学会組織と協力して、途上国の研究者にトキシコロジーへ社会に於ける重要性の理解を普及すべく、国際トキシコロジー学会(ICT:次回はMontrealで2004)への招待企画、それらの地域でのリスクアセスメント夏期研修の企画、諸国の独自のトキシコロジー学会組織の設立援助、IUTOXへの加盟の促進と途上国トキシコロジー会議の独自開催、また基盤科学としてのトキシコロジーの学問的イメージの普及、などの活動を重ねている。(その意味で諸国の研究者が新しい知見の集積に向けて競争的に集散する通常の化学や生物学領域の国際学会とは目標が異なり、むしろ国連化学物質安全計画や化学物質安全フォーラムではNGOとして役割を果たしている。)今回の発表:この発表では、IUTOXの事務局に籍をおく日本トキシコロジー学会の会員として、簡単なその沿革の紹介、および、今期(2004-2007)の活動計画や活動内容を、会員諸兄姉に紹介する。IUTOXの活動についての諸兄姉の積極的なご意見、IUTOXの国際協力活動への会員個々人としての積極的がご協力をお願いする。(http://www.iutox.org/)
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春山 恵美子, 児玉 倫哉, 坂本 和仁, 小山 周三, 中間 和浩, 泉 知博, 若松 真矢, 楠元 正吾, 和泉 博之, 戸門 洋志, ...
セッションID: O-12
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
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【目的】 薬物及び媒体の投与により,特にイヌで血漿中ヒスタミン濃度が上昇し各種症状が発現することが知られている.今回,ヒスタミン遊離の種差を検討するため,イヌにおいてヒスタミン遊離を起こすことが知られているPolysorbate 80をビーグル,カニクイザル及びラットに静脈内投与し比較検討した.【方法】 Polysorbate 80[投与量(ビーグル:0,0.3,3及び10 mg/kg,カニクイザル:0,100及び300 mg/kg,ラット:0,300 mg/kg)]を各群雄4例のビーグル,カニクイザル及びラットに10 mL/kgの投与容量,20 mL/分(ビーグル),10 mL/分(カニクイザル)あるいは2 mL/分(ラット)の投与速度で単回静脈内投与した.また,対照群には生理食塩液をPolysorbate 80と同様の方法で投与した.これらの動物について,一般状態観察,血圧,心拍数,血漿中ヒスタミン濃度,血液学的検査及び血液生化学的検査を実施した.【成績および総括】 ビーグルでは3及び10 mg/kg群で発赤及び浮腫等の種々の変化が投与中から発現し,血圧の低下,血漿中ヒスタミン濃度の増加がみられた.カニクイザルでは300 mg/kg群で発赤が投与終了直後に一過性にみられたのみであった.ラットでは300 mg/kgを投与しても変化はみられなかった.以上の結果,ビーグルではヒスタミン遊離に起因する種々の変化がみられたが,カニクイザルではその100倍の投与量で発赤が投与終了直後に一過性にみられたのみであり,ラットでは変化がみられなかった.これらのことから,薬物あるいは媒体の投与によるヒスタミン遊離には種差があり,イヌが最も反応性が高いものと考えられた.
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立石 大志, 仲野 善久, 今井 統隆, 米盛 幸治, 尾根田 暁, 福西 克弘
セッションID: O-13
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
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生殖発生毒性試験において,ウサギは非げっ類として通常選択される動物種である.しかし,通常ウサギは一般毒性試験で用いられない事から,使用溶媒とトキシコキネティクスの関係について基礎的な検討が行われていない場合がしばしばみられる.一方,最近の医薬品の非臨床試験では油性媒体を用いたものも多くみられる.ウサギでは油性溶媒により毒性が発現することが知られているが,トキシコキネティクスの観点から,他の動物種との共通媒体を用いてヒトへの外挿評価可能な体内曝露を求められる場合がある.今回は,体内曝露量を上げる目的で投与溶媒容量を上げることを想定し,オリブ油を経口投与した際の影響について成熟雌ウサギ(Kbl:JW)を用いて検討した.投与期間はウサギの器官形成期投与で用いられる13日間を設定した.投与容量及び1日の投与回数により7群を設けた.1群は2.5mLを1回投与,2群は5mLを1回投与,4群は2.5mL×2の分割投与,5群は10mLの1回投与,6群は5mL×2の分割投与,7群は10mL×2の分割投与とした.動物数は一群あたり3匹を用いた.1群では体重及び摂餌量の減少がみられたが,死亡は認められなかった.2∼7群では摂餌量が著しく減少或いは廃絶状態となった.飲水量及び体重も減少し,死亡が認められた.2例が死亡した時点の一般状態を参考にして,生残例は安楽死させた.以上のことからオリブ油を媒体としてウサギ生殖発生毒性試験を行う場合は,投与容量は2.5mL以下と考えられた.
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楠元 正吾, 寳来 直人, 持増 龍太郎, 門倉 豪臣, 春山 恵美子, 船戸 護, 和泉 博之, 戸門 洋志, 福崎 好一郎
セッションID: O-14
発行日: 2005年
公開日: 2005/06/08
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【目的】 現在,糖尿病モデル動物としてマウス及びラットがよく知られている.今回,カニクイザルの自然発症型糖尿病モデル確立の初期段階として,高齢,肥満の雌性カニクイザルを用いてその耐糖能,体脂肪率,体重,トリグリセリド,総コレステロールなどを測定し,それらの推移及び関連について調べた.
【方法】 8~15才齢の雌性カニクイザル9例に40%glucoseを24 mg/kgで静脈内投与し,投与後1時間まで経時的に採血し,耐糖能を調べた.約1年後に再度同様の方法で耐糖能を調べた.耐糖能と同時に血清中ASAT,ALAT,ALP,トリグリセリド,総コレステロール,体重及びDXA法による体脂肪率測定を行った.
【成績及び総括】 初回測定時(平均体脂肪率:24.11%,平均体重:4.81 kg)と比較して,約1年後に体脂肪率または体重が増加した個体は6/9例,減少した個体は3/9例で,平均体脂肪率及び体重それぞれは23.59%及び5.08 kgであった.このときの血清グルコースの平均AUC(glu)
0-60min値は初回6674.3 mg・min/mL,約1年後8849.9 mg・min/mL,その増加率は126.5%であった.Insulinの平均AUC(ins.)
0-60min値は初回1697.60 μU・min/mL,約1年後5254.42 μU・min/mL,その増加率は321.61%であった.個別値でみると,初回測定時と比較して約1年後に血清グルコースのAUC
0-60minが増加した個体は5/9例であったが,InsulinのAUC
0-60minはほぼ全例(8/9例)で増加していた.なお,これら9例において,体脂肪率の変化と耐糖能,またはその他のパラメータに明確な関連性は認められなかった.このことより,加齢によって高齢または肥満カニクイザルにおいて耐糖能の低下傾向及びInsulin抵抗性をもたらすことが示唆された.さらにこれらの耐糖能が低下した例について,陽性対照物質を投与し,耐糖能の改善効果についても併せて検討した.
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