抄録
【目的】我々は現在までに,ウシII型コラーゲンをカニクイザルに感作することにより,コラーゲン誘導型関節炎モデル(CIA)を作成し,臨床においても重要な関節面における腫脹をモニタリングすることにより薬効評価を行ってきた.本報告では,指骨関節における腫脹と骨代謝マーカーを含む生化学パラメータとの相関を調べた.【方法】3から7才の雌性カニクイザル90匹を用いて,ウシII型コラーゲンとFreund完全アジュバントを等量混合したエマルジョンの皮内投与により感作した.1回目感作の3週間後に1回目感作と同様の方法で2回目の感作を行い,さらに2週間経過を観察しCIAモデルを作成した.この誘導期間において,指骨楕円面積,腫脹score,体重,尿検査,血液学的検査,及び血液生化学的検査を経時的に評価した.なお,指骨楕円面積は前後肢の第1指を除く16指の中位関節を対象に測定し,腫脹scoreでは前後肢の膝,肘関節を含み主な可動関節64関節を対象にした.【結果】感作前の平均指骨楕円面積を基準にして,誘導期間終了後に105%以上を示した個体は75/90例(83%)であった.腫脹score観察においては86/90例(96.0%)で1ヶ所以上の関節に腫脹が観察された.指骨楕円面積と腫脹scoreとの相関をみたところ,高い相関がみられ(R=0.800),血清ALP及び尿中NTxとも高い相関がみられた.一方,炎症マーカーとして知られているESR及びCRPとは明らかな関連はなかった.【考察】臨床においても関節リウマチにおける骨代謝マーカーの意義は未だ十分に知見が集まっていない.しかしながら,本研究において指骨楕円面積が骨形成マーカーである血清ALP,及び骨吸収マーカーである尿中NTxと高い相関性を有したことから,骨代謝が高代謝回転型になっていることが示唆された.また,指骨楕円面積と高い相関がみられた腫脹score,血清ALP及び尿中NTxが薬効評価に有用なパラメータになると考えられた.