日本トキシコロジー学会学術年会
第32回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: Y-31
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優秀研究発表賞応募演題
メトキシクロルの胎児・新生児期暴露を受けた雄性ラットの成長過程における前立腺の網羅的遺伝子発現解析
*大塚 亮一武田 真記夫山口 悟林 宏一竹内 幸子桑原 真紀高橋 尚史千葉 裕子小坂 忠司原田 孝則
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抄録
 内分泌攪乱作用が示唆されているメトキシクロル(MXC)の胎児・新生児期暴露(経胎盤,経乳あるいは経餌暴露)を受けた雄性ラットの成長過程における前立腺の経時的変化を検索するため,一世代繁殖試験を実施した。Sprague-Dawley(Jcl:SD)ラットの母動物にのみ交配2週間前から授乳期までMXCを0,30,100,300,1000ppmの濃度で混餌投与し,同母親から得られた新生児ラットの雄を供試動物とした。各用量群の新生児ラットは,離乳後から正常な基礎飼料を給餌し,10および52週齢時に達した時点で前立腺の重量測定および病理組織学的検索を実施した。また,1000ppm群と対照(0ppm)群の前立腺に関してはマイクロアレイ解析を行った。 前立腺の重量測定では,10週齢時には有意な変化はみられなかったが,52週齢時において300および1000 ppm群の前立腺重量が対照群に比べ有意に増加した。しかし、病理組織学的検査ではいずれの週齢時においてもMXC暴露の影響と考えられる異常は特に認められなかった。 マイクロアレイ解析では,10週齢時において10前後の遺伝子が対照群に比べup-またはdown-regulateされ,52週齢時においては25の遺伝子がup-regulate,15の遺伝子がdown-regulateされていた。また,glutathione S-transferase,calmodulin等の遺伝子は両検査時において有意な変動を示した。以上のように,胎児・新生児期に高用量のMXC暴露を受けた雄性ラットでは,52週齢時において前立腺重量が対照群に比べ有意に増加した。また,マイクロアレイ解析では幾つかの遺伝子が10および52週齢時で同様の変動を示したことから,MXCの胎児・新生児期暴露は成長過程の前立腺の遺伝子発現系に対し持続的に影響を及ぼすことが示唆された。その結果、遺伝子発現系における恒常性の維持が撹乱され,10週から52週齢時の成熟期において前立腺肥大という形で顕在化した可能性が考えられた。現在,各々の遺伝子に関する詳細な解析を実施している。
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© 2005 日本毒性学会
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