抄録
フェノバルビタール 60 mg/kg/日を雌雄のCrl:CD (SD) ラットに経口投与し、単回投与4及び24時間後並びに3回投与24時間後の肝臓を用い薬物代謝に関する酵素について活性及びリアルタイム定量PCR (qPCR) 法により遺伝子の発現量を測定した。また、3回投与24時間後の肝臓について免疫組織化学染色 (IHC) 及びin situ hybridization (ISH) 法を用いて酵素蛋白及び遺伝子の発現並びに局在を調べた。CYP3A1/2の酵素活性及びqPCR法による遺伝子発現量は、両者ともに単回投与24時間後から高値が見られたのに対し、CYP2B1/2では遺伝子発現量の高値が単回投与4時間後からみられ、酵素活性の高値は遅れて単回投与24時間後からみられた。いずれの遺伝子についても発現量の増加は3回投与24時間後のサンプルで実施したISH法で確認され、IHCの成績と同様に小葉中心性に発現増加が認められた。フェノバルビタールによる肝薬物代謝酵素活性の変動とqPCR法による遺伝子発現量の変動に一致がみられ、IHC及びISH法によりその分子種別の局在変化が明らかとなった。また、CYP2B1/2においてはqPCR法の方が酵素活性に比べて変動を早期に検出できた。qPCR法とISH法を組み合わせることにより、分子種別の肝薬物代謝酵素の遺伝子発現変動及び局在変化を検出することができ、肝細胞肥大がみられた場合の毒性評価において、有効に活用できると考えられる。