抄録
本研究では、医薬品開発における早期肝毒性予測のためのゲノミクス的アプローチの有用性を検討するため、肝毒性を惹起するアセトアミノフェン(APAP)、四塩化炭素(CL)、アミオダロン(AD)およびテトラサイクリン(TC)の毒性用量を雄ラットに経口投与し、投与6および24時間後に採取した肝臓を用いてGeneChip microarray解析をもとにした遺伝子発現解析を行った。投与後6時間には、明らかな病理組織学的変化はみられなかったが、投与後24時間では、ADを除く全ての薬物により変化がみとめられた。遺伝子発現解析においては、GeneChip microarray解析の信頼性を確認するため、S-plusを用いてクラスター解析を行った。投与後6時間には、明らかな病理変化が認められなかったにもかかわらず、投与化合物と相関性のある5つのクラスターに分かれた。投与後24時間でも同様であった。GeneSpringを用いた遺伝子発現解析では、全ての薬物で投与後6および24時間に、転写因子、酸化ストレスおよび脂質代謝関連遺伝子が対照群に比し変化していた。さらに、これらの影響を受けた遺伝子をIngenuity Pathway Analysisを用いてネットワーク解析を行ったところ、全ての薬物で投与後6および24時間にSREBP1を介した脂質代謝関連遺伝子の減少制御、APAPおよびCLではNrf2を介した酸化ストレス関連遺伝子の増加制御ネットワークが見出された。以上のことから、クラスター解析やネットワーク解析は、肝毒性を予測するために有用な手法であると推察された。