日本トキシコロジー学会学術年会
第33回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-107
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トキシコパノミクス
F344ラットにおけるacetaminophen誘発肝障害に3-aminobenzamideが与える影響
*伊藤 和美渡辺 恭子熊谷 和善鈴木 洋子斉藤 有司寺田 仁美清沢 直樹寺西 宗広古川 忠司矢本 敬中江 大真鍋 淳
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抄録

【目的】Acetaminophen(APAP)は,代謝過程で生ずる活性酸素による酸化ストレスや代謝産物によるグルタチオン(GSH)枯渇に基づいて肝細胞壊死を誘発する.一方,poly-ADP-ribosyltransferase(PARP)抑制物質である3-aminobenzamide(3-AB)による活性酸素等の毒性作用に対する細胞保護効果に関しては,過剰なPARP発現によるNAD+枯渇防止のほか,3-ABによる間接的な抗酸化作用の関与なども示唆されている.今回,3-ABによるAPAP誘発肝障害に対する保護作用の機作解析を目的として,両化合物をラットに投与し,肝臓におけるPARP合成産物の免疫染色と遺伝子発現解析を実施した.【材料および方法】動物は9週齢の雄性F344ラットを用い,各群4例の動物に,APAP(1000 mg/kg,p.o.),3-AB(600 mg/kg,i.p.)をそれぞれ単独に,あるいは併用投与した.実験開始12時間後に肝臓を採取,PARP合成産物であるpoly ADP ribose (pADPr)の免疫染色とGeneChip を用いた網羅的遺伝子発現解析を実施した.【結果および考察】APAP単独群,3-AB単独群,およびAPAPと3-ABの併用群で,GSH枯渇関連(59個),細胞障害関連(30個),細胞周期関連(14個)のプローブについて発現変動を評価した結果,3-AB併用によりAPAP単独群に比べてこれらプローブの発現誘導は抑制される傾向を示した.発現増加の低減は、細胞障害関連遺伝子群において最も顕著であった.pADPrの免疫染色ではAPAP単独群で変性・壊死巣周囲肝細胞の核で陽性反応が認められたが,3-AB併用投与群では陰性であった.以上の結果より,3-ABによるAPAP肝障害の低減作用にはDNAの損傷抑制とDNA修復メカニズムが寄与している可能性が示された.

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© 2006 日本毒性学会
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