日本トキシコロジー学会学術年会
第33回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-106
会議情報
トキシコパノミクス
ヒト肝細胞キメラマウスの毒性試験への応用性-アセトアミノフェン投与マウス肝のプロテオミクスおよびメタボノミクスによる解析-
*山本 利憲富澤 香織藤川 真章佐藤 靖山田 弘堀井 郁夫
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抄録

[緒言]ヒト肝細胞を移植したヒト肝細胞キメラマウス(以下,キメラマウス)の毒性試験への応用の妥当性を検討する目的で,アセトアミノフェン(APAP)を単回投与した時の肝臓中タンパク質並びに尿および血清中の内因性代謝物の変動を解析した。[方法]キメラマウスに,APAPを1400mg/kgの用量で単回経口投与し,4および24時間後に肝臓,血液および膀胱尿を採取した。プロテオミクスはキメラマウス肝臓のヒト肝細胞領域のみを対象として実施し,2次元電気泳動によるタンパク質分離後,コントロール群と投与群とのスポットの比較および階層的クラスター解析により発現変動の確認されたタンパク質を質量分析により同定した。メタボノミクスは,尿および血清を対象として実施し,600MHz NMRにより測定したスペクトルの主成分分析により代謝物の変動を解析した。[結果]肝臓中タンパク質のプロテオミクス解析の結果,キメラマウスの肝臓中タンパク質発現の大きな個体差のために,発現の変動しているタンパク質の抽出は困難であった。この個体差の大きさは,病理組織学的検査の結果と矛盾しないものでもあった。そこで,正常肝組織像を示す個体と典型的なAPAP特異的な組織変化を示す個体との比較および病理組織学的検査と関連させた階層的クラスター解析により,発現変動タンパク質を抽出した。その結果,35種のタンパク質を同定した。メタボノミクス解析においては,尿中および血清中の3種の代謝物の変動を認めた。以上の結果から,キメラマウスにおけるAPAPの肝毒性発現メカニズムは,主に脂質/脂肪酸代謝およびエネルギー代謝パスウェイを介した変化,および酸化的ストレスによるものであると推測された。この一連のヒト型肝モデル動物でのパラメータの変化は,正常マウスにおいて報告されているものと同様であった事から、ヒト肝で誘発される特異反応などについては更なる検討が必要とされる。

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© 2006 日本毒性学会
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