抄録
【目的】トキシコゲノミクスプロジェクト(TGP)では,代表的な肝障害惹起化合物を中心とした多数の化合物を選抜し,これらを暴露したラット肝臓・ラット肝細胞・ヒト肝細胞に関し,Affymetrix社のGeneChipアレイを用いたデータベース(DB)を構築している.本検討では,(A)発がん関連遺伝子,(B)グルタチオン枯渇応答性遺伝子,(C)PPAR alpha標的遺伝子,にそれぞれ関係する遺伝子セット(バイオマーカー:BM)に関する効率的な解析法の構築を目的とした.【方法】各々の遺伝子プローブセットに関する化合物投与群/対照群シグナル比の対数値(signal log ratio:SLR)を用いて,I)全体の発現量増減傾向の指標として{(SLRの和)/(BMに含まれる遺伝子数)}を計算し,II)全体の遺伝子発現変動レベルの指標として{(SLRの平方和)/(BMに含まれる遺伝子数)}を計算して,最後にI)とII)の両計算値を乗じたスコアを算出した.【結果および考察】いずれのBMにおいても,TGPDBに関する各化合物データのスコア算出結果は,既知の報告に照らして妥当なものと考えられた.本スコアは簡潔な計算により算出され,多数の化合物データに関する遺伝子発現変動レベルの大まかな傾向を1次元のスコアで表示可能とすることから,TGPDBのような大規模DBの解析に際して有用であり,また様々な活用法が期待される.例として,特定のBMに関してラット肝臓・ラット肝細胞・ヒト肝細胞のスコアをそれぞれ算出し,3次元の散布図を描くことで,異なる生物種・細胞種におけるBMの互換性・妥当性を評価することができるなどの活用法を紹介する.この他,スコアの精度をさらに高めるために,GeneChipデータのS/N比の指標であるPresence/Absence情報を考慮したスコアの検討結果に関しても議論する.