抄録
【目的】我々は第32回本学会学術年会において,幼若動物における酵素誘導の影響について調べ,Phenobarbital(PB)を投与したラットの肝cytochrome P450(CYP)活性が日齢により変化することを報告した。今回さらにPBによる酵素誘導処理後の肝CYPにおけるmRNA発現の変化について検討したので報告する。
【方法】生後12日齢,26日齢,および7.5週齢のCrl:CD(SD)雌雄ラットにPB(80 mg/kg)を4日間投与し,同時に無処置群を設定した(12日齢:雌雄各20匹,他:雌雄各6匹)。投与期間終了後肝臓を摘出し,CYP2A1,2A2,2B1,2B2,2C6,2C11,3A1,3A2およびGAPDHについてリアルタイムPCR(ABI PRISM 7000)によりmRNA発現を定量した。
【結果】無処置群において,7.5週齡ではCYP2A2,2C11,3A2のmRNA発現に大きな性差がみられたが(雄>雌),12日齢および26日齢では顕著な性差はみられなかった。また,雄のCYP2A2,2C11,3A2のmRNA発現に日齢差が認められた(12日齡≦26日齢<7.5週齡)。PB投与群において,7.5週齢ではCYP2B1,2B2,2C6,3A1のmRNA発現が雌雄ともに増加し,CYP3A2は雄のみ,CYP2A1は雌のみ増加した。26日齢ではCYP2A1,2B1,2B2,2C6,3A1および3A2のmRNA発現が雌雄ともに増加し,12日齢ではCYP2A1,2B1,2B2,2C6,3A1のmRNA発現が雌雄ともに増加した。CYP2A2,2C11のmRNA発現は,PB投与でいずれの日齢にも変化がみられなかった。
【まとめ】PB投与により,幼若ラットにおいてもCYP2B1,2B2,2C6,3A1が誘導されることが示された。また,CYP3A2はPB投与により雌雄ともに26日齢で誘導され,7.5週齢では雄のみ誘導されることが示された。前回報告したPBによるTestosterone 2 alpha-,7 alpha-,6 beta-,16 beta- hydroxylase活性の変化と,それぞれに対応する各CYPのmRNA発現の変化はほぼ相関しており,今回の実験から幼若ラットにおける肝CYPの誘導の詳細が明らかになった。