抄録
【目的】Phenobarbital(PB)は抗不安薬・抗てんかん薬として広く使われており,ホルモンへの影響を及ぼすことが知られている。特に,ヒトで幼少期に投与することにより,性成熟の遅延,生殖能の低下が引き起こされることが知られている。そこで,本実験では日齢の異なるラットを用いて,PBが血清中テストステロン(Ts)およびLH濃度へ及ぼす影響を調べた。
【方法】生後12日齢,26日齢,54日齢,および78日齢のCrl:CD(SD)雄ラットにそれぞれPB(80mg/kg)を4日間腹腔内投与した群と無処置群を設定した(12日齢:20 rats/sex/group,他:6 rats/sex/group)。各動物からイソフルラン麻酔下にて腹大静脈より採血を行った後,ELISAにより血清中のTs,LH濃度を測定した。 また,ステロイドホルモンの代謝に関わると言われているcytochrome P450(CYP)の変化を調べるため,肝臓からMicrosomeを調製し,Testosterone 6 beta-(T6B),16 alpha-(T16A),16 beta-(T16B)hydroxylase活性を測定した。
【結果】血清中Ts濃度は12日齢PB投与群では無処置群と比較して約0.3倍と減少傾向を示し,26,54,78日齢PB投与群では各日齢の無処置群と比較してそれぞれ1.2倍,1.7倍,1.2倍とやや増加傾向が見られた。また,血清中LH濃度は12日齢PB投与群では無処置群と比較して約2倍と増加傾向を示し,26,54,78日齢PB投与群では各日齢の無処置群と比較して約0.7倍,0.9倍,0.6倍とやや減少傾向を示した。また,各CYP活性はPB投与により全ての日齢で無処置群と比較して上昇を示した。
【まとめ】PB投与により12日齢ではTsの減少傾向とLHの増加傾向が見られ,その他の日齢ではTsの増加傾向とLHの減少傾向が見られた。一方,CYPはPB投与により12,26日齢においても54,78日齢とほぼ同程度に誘導された。以上の結果より,PB投与による血清中Ts,LH濃度への影響は12日齢とその他の日齢では異なることが示唆された。