抄録
【目的】薬物は一般に低分子量(分子量1,000以下)なので、抗原性を示さず、生体内高分子と結合した時、アレルギー反応を引き起こすと考えられている。しかしながら、そのアレルギー発現メカニズムに関する明確な報告は少ない。そこで、低分子量薬物のモデルとして蛍光物質であるDansyl chloride (DC)を繰り返しモルモット腹腔内に投与し、DCが生体内高分子と結合するのか検討を行った。その結果、モルモット(gp)肝可溶性画分中よりDCの蛍光を有する分子量約25 kDaのGlutathione S-Transferase(GST)M1サブユニットがSDS-PAGE法により検出された。また、DC非投与モルモット肝よりgpGSTM1-1分子種を単離•精製し、DCを反応させ、DC-gpGSTM1-1結合体を調製した。そしてその抗原性を皮膚反応で検討した結果、抗原性を示すことが明らかとなった。これらの結果は、DCが生体内においてGSTM1-1分子種と結合し、抗原性を獲得することを強く示唆するものであり、多くの種における重要な解毒代謝酵素として知られるGSTが薬物アレルギーにおけるキャリアと成りうることを強く示唆する始めての結果となった。現在、モルモットにおいてその存在が知られているその他の分子種(gpGSTsM1-2, M1-3*, A1-1)とDCの結合性の比較も合せて報告する。