抄録
現在,Peroxisome proliferator-activated receptors(PPARs)を標的とした薬剤は,抗高脂血症,抗糖尿病,抗腫瘍薬として多くの製薬企業で上市もしくは開発中である。一方,PPARアゴニストに対する生体の反応性には種差があることが報告されている。したがって,PPARアゴニストの反応の種差を評価しておくことは医薬品開発のリスク評価に重要である。今回,我々はラット・マウス・イヌおよびサルの初代培養肝細胞を用いて,PPARアゴニストの反応性をLDH/WST-8 assayから算出した細胞生存率および網羅的遺伝子発現解析(GeneChip)で評価した。PPARαアゴニストとしてClofibric acid,CiprofibrateおよびWy-14,643,PPARγアゴニストとして15-deoxy-Δ12,14-prostagrandin J2,PioglitazoneおよびRosiglitazone,PPARβ/δアゴニストとしてGW501516を用いた。24時間曝露において,PPARαアゴニストではラットのWy-14,643のみで細胞生存率の低下が認められた。一方,PPARγアゴニストおよびPPARβ/δアゴニストの場合,イヌのPioglitazoneおよびRosiglitazoneでは細胞生存率に変化は認められなかったが,その他の化合物,動物種では細胞生存率の低下が観察され,その程度には種差が認められた。さらに遺伝子発現解析では,PPARαアゴニストにおいてげっ歯類で認められるCYP4AやAcox1などの脂肪酸β酸化に関する遺伝子発現の亢進がイヌやサルではほとんど見られなかった。本発表では,細胞生存率および網羅的遺伝子発現解析からPPARアゴニストの反応性における種差を考察する。