日本トキシコロジー学会学術年会
第33回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: SY4-1
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環境汚染物質の毒性評価-分子レベルから個体レベルまで-
環境化学物質の毒性発現における代謝活性化の関与
*太田 茂
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抄録
内分泌かく乱作用という化学物質の新たな毒性が見出され、これまで環境中に放出された膨大な数の化学物質を早急にスクリーニングする必要性が発生した。近年、種々の試験法が開発されてきているが、大部分の試験法は化学物質単独での活性を調べるのみである。しかし、ほとんどの化学物質は、生体内に取り込まれた後、主に肝において代謝変換され体外に排出されている。つまり、化学物質は体内で代謝されることにより、本来内分泌かく乱作用を示さない物質が活性体に変換される可能性が考えられる。特に、内分泌かく乱作用のように微量でも発現する毒性を考える場合、主な代謝物でなくとも高い活性を発現することがあるため、代謝による活性変動を詳細に検討する必要性は高い。一方、ヒトおよび動物体内で環境化学物質が代謝され解毒される可能性も存在し、このような場合も包括して総合的に評価する事に対する意義は極めて高いと考えられる。しかしながらその実態に関しては確実なるスクリーニング系の構築が現在までなされておらず精細なる検討が行われていないのが現状である。本研究では、生物が常に暴露されている環境化学物質およびその代謝物、あるいは代謝酵素存在下での反応後の内分泌かく乱活性を検出することにより、今後のスクリーニング法に代謝プロセスに対する考慮の必要性を提示するものである。
また最近になって、胎児期、新生児期における環境化学物質による内分泌かく乱作用も注目を集めている。成長初期は薬物代謝酵素活性も成人と異なっていることが考えられ、この点にも注目し、胎児期、新生児期の代謝酵素変異と内分泌かく乱作用の活性化についても言及する。
 講演においては、具体的な事例として環境化学物質の中で体内において代謝過程を経て毒性を増強する化合物として合成樹脂の原料であるビスフェノールAなどを取りあげて、代謝過程の重要性について報告したい。
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© 2006 日本毒性学会
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