日本トキシコロジー学会学術年会
第33回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: SY4-2
会議情報
環境汚染物質の毒性評価-分子レベルから個体レベルまで-
環境化学物質による酸化的DNA損傷メカニズムと酸化的タンパク質修飾
*及川 伸二
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
悪性新生物は日本における死因の第一位を占め、未だ増加傾向にあることから、その予防法を確立することは重要な課題である。がん予防では、環境中の発がん物質の同定やリスク評価を行うことが非常に有効である。我々は、環境発がん物質による遺伝子損傷機構について、分子生物学的手法を応用し、ヒトがん原遺伝子およびがん抑制遺伝子を含むDNA断片を用いて解析を行ってきた。その結果、Ames試験では変異原性を検出できない発がん性環境化学物質の多くが活性酸素を生成し酸化的にDNAを損傷する機構を解明した。これらの研究から、Ames試験陰性物質の発がん性を予知する評価法の開発を行っている。さらに近年、がんの化学予防における抗酸化剤の有効性が注目されており、動物実験や疫学研究が進められている。しかし、安全性についての研究は、ほとんどなされていない。従って、がんの化学予防を有効に進めるため、これまでに開発した方法を応用し抗酸化剤の安全性の評価も行っている。
加齢とともに酸化ストレスに対する防御能が低下することにより、環境化学物質などによるDNAやタンパク質の酸化的損傷が増加し、老化が進行するとの仮説が提唱されている。最近、染色体の末端部に存在するテロメア繰り返し配列の短縮が老化のプログラムに関与しているとの報告がなされている。我々は、酸化ストレスによるテロメア短縮促進機構を解明し、老化促進における役割について研究を行っている。
本シンポジウムでは環境化学物質による酸化的なDNAやタンパク質の損傷機構について概説し、発がんや老化における役割や毒性評価法への応用の可能性について検討を行う。さらに、内分泌撹乱化学物質ビスフェノールA (BPA) がラットに白血病などを引き起こすことに注目し、BPAによる細胞毒性について最近の知見を報告する。
著者関連情報
© 2006 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top