抄録
医薬品開発において問題となる毒性のひとつに神経毒性があり,in vivoの毒性を反映する実際的なin vitroスクリーニング系の確立は,創薬開発早期の毒性評価に特に重要であると考えられる。今回,末梢神経毒性のスクリーニング系の確立を目的として,初代培養ラット背根神経節(dorsal root ganglions; DRGs)に神経毒性を誘発化合物(スラミンまたはドキソルビシン)を暴露し,形態学的観察および軸索面積の画像解析結果をin vivoでの形態学的観察および軸索面積の画像解析結果と比較して,in vivoの毒性を反映するin vitroスクリーニング系としての有用性を検討した。
in vivo神経毒性誘発試験により得られたDRGsおよび坐骨神経の形態学的観察および軸索面積の画像解析の結果,スラミン投与群では神経細胞の変性に比べ軸索の変性および軸索面積の減少など,軸索の障害が目立ち,ドキソルビシン投与群では特に神経細胞における細胞質の空胞変性,神経細胞の腫大が目立ったのに加え,軸索の変性および神経線維の減数を認め,各々の化合物に特徴的な神経毒性を検出した。また,in vitroにおいて,各々の化合物に暴露されたDRGsの形態学的観察および画像解析の結果,両化合物に共通して神経細胞の変性が認められたほか,スラミンに暴露されたDRGsでは神経線維の異常走行が,ドキソルビシンに暴露されたDRGsでは用量依存的な神経線維の伸長阻害が認められ,それぞれ異なる神経毒性所見を示した。
以上の結果から,in vitro スクリーニング系はin vivoの神経毒性を反映し,医薬品早期の開発における末梢神経毒性のスクリーニング系に応用可能である可能性が示唆された。