抄録
【目的】酵母光育成阻害試験法はin vitro光毒性試験法の一つとして知られており、同じくin vitro光毒性試験法としてOECDガイドラインに収載されている培養細胞を用いた3T3NRU-PT法に対し、適用可能な試料の幅が広い等の利点から、近年動物実験代替法学会等の主導でバリデーションが行われた実績もある。この試験法は、酵母を培養した寒天培地に試料を含ませた円形濾紙を置き、紫外線照射時および非照射時における酵母生育阻止円の差により光毒性の有無を判定する方法である。演者らは、本方法では形成される阻止円の大きさに試料の拡散性が影響している、即ち試料の拡散性が毒性評価に影響を与えると考え、これを確認したところいくつかの知見が得られたので報告する。
【方法・結果】酵母光育成阻害試験法において、1cm2あたりの紫外線照射量を5Jから50Jまで変化させて照射した場合、照射量依存的に陽性対照物質(8-MOP)による生育阻止円の拡大が確認された。一方で照射量の変化に伴って照射時間も変化し、照射強度2mW/cm2では5Jで約42分、50Jでは約6時間57分必要となる。そこで試料適用後、紫外線照射前に室温にて培養し、各照射条件の総培養時間を50J照射と揃えて時間の差を解消する実験を行った。その結果、各照射量で照射前培養無しの条件に比べ、阻止円の拡大が認められた。しかしながら、依然として照射量依存的な阻止円の拡大も観察され、本方法の阻止円の形成には、紫外線照射量と総培養時間の両方が影響していることが示唆された。
【考察】酵母光育成阻害試験法は試料の適用範囲が広がるなど利点はあるが、その実施においては、拡散に影響を与えると思われる時間や温度の管理、溶媒の選択などに留意して試験条件を設定する必要があると思われる。