日本トキシコロジー学会学術年会
第33回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-212
会議情報
脳神経系
有機塩素系および有機リン系農薬の複合暴露がラットの中枢神経系におよぼす影響
*配島 淳子首藤 康文大塚 亮一山口 悟藤江 秀彰松本 力林 豊武田 眞記夫原田 孝則
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抄録
農薬の複合毒性の評価は困難であり、特に神経系への影響についてはあまり明らかにされていない。本研究は中枢神経系における農薬の複合暴露の影響を明らかにすることを目的とした。供試農薬には神経毒性を示す有機塩素系(DDT)および有機リン系農薬(MPP)を用いた。5週齢のWistar系雄ラット(n=6/群)にDDTを60 mg/kg/dayで14日間反復経口投与した。4週間の休薬期間後、0、50、200 mg/kg用量のMPPを単回経口投与した。神経毒性評価として神経症状、自発運動量を測定した。分子生物学的検索として、MPP投与後72時間に採取した新鮮凍結大脳組織よりLaser・Captured Microdissectionで視床下部を採材・抽出したRNAをリニア増幅したaRNAサンプルとRat ADME Array(旭テクノグラス)を用い、脳における遺伝子発現を網羅的に解析した。その結果、DDT単独投与群では体重抑制または神経症状は認められなかった。一方、MPPのみを200 mg/kg投与した群では投与後1時間に神経症状を示したが、その後回復した。DDT+MPP投与群ではMPP用量依存的に体重抑制および重篤な神経症状を示し、高用量のMPPを投与した群では症状は継続し、死亡も確認された(4例/6例)。自発運動量には単独と複合暴露に差は認められなかった。分子生物学的検索では、DDT単独投与群では全ての遺伝子発現は低かった。DDT+MPP 200 mg/kg投与群で脳の障害を示す、糖質コルチコイド調節キナーゼとS-100関連蛋白遺伝子が高度に発現し、グルタミン酸レセプターや神経軸索輸送関連因子の発現は著しく減少した。このことから、DDTの脳内における残留性あるいは遺伝子発現による可塑性がMPPの神経毒性発現を増強させることが示唆された。(平成17年度 厚生労働省科学補助金研究事業)
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© 2006 日本毒性学会
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