日本トキシコロジー学会学術年会
第33回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-211
会議情報
脳神経系
幼若および成熟ラットにおける有機リン剤と有機塩素剤あるいはカーバメート剤の単回投与複合毒性の比較
*首藤 康文配島 淳子小嶋 五百合佐々木 淳矢藤江 秀彰松本 力林 豊上田 英夫小坂 忠司原田 孝則
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抄録
農薬の複合毒性については評価上の困難性もあり未解決な点が多く、これを解明することは食の安全を担保する上にも極めて重要である。本研究では神経毒性が示唆されている農薬に複合曝露された場合の影響を明らかにしリスク評価に必要な基礎的毒性情報を得る事を目的として、神経系への影響を中心に幼若および成熟ラットに対する毒性を比較した。
【方法】有機リン系(MPP 50 mg/kg)、有機塩素系(DDT 75 mg/kg)およびカーバメート系(MPMC 60および30 mg/kg)の3種類の殺虫剤を組み合わせ、3および8週齢のWistar系雌ラットに複合的に単回経口投与して、死亡率、神経症状の観察、自発運動量の測定およびコリンエステラーゼ活性(血漿、血球、脳)の測定を実施し複合毒性を評価した。
【結果】幼若ラットにおける単剤投与では、MPPあるいはDDTの投与による神経症状は成熟動物よりやや強く発現し、MPMCの投与では成熟ラットと同じ用量で死亡が生じた。MPPとDDTの複合投与では、成熟および幼若ラット共に神経症状をやや増強する程度であり、協力作用はほとんど認められなかった。MPPとMPMCの複合投与では成熟ラットにおいて相加的効果が認められ、幼若ラットではさらに毒性が増強されて成熟ラットの半量のMPMCでも死亡が生じた。成熟ラットのChE活性はMPP、MPMCの単独投与および複合投与とも同程度に低下し回復状態にも差はなかったが、幼若ラットにおけるMPPとMPMCの複合投与では回復が早まった。
以上の結果から、成熟ラットと幼若ラットには代謝能、感受性、蓄積性の違いがあり、複合曝露においては単剤曝露以上に毒性が異なって発現する可能性が示唆された。従って、化学物質のリスク評価では成熟動物と幼若動物の毒性成績を区別して評価する必要がある。(平成17年度 厚生労働省科学研究補助金事業)
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© 2006 日本毒性学会
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