日本トキシコロジー学会学術年会
第33回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: TO-8
会議情報
第1回毒性オミクスフォーラム(共催)
創薬段階の安全性初期評価におけるトキシコパノミクスの有用性とその応用
*山本 利憲
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
創薬の初期段階の安全性評価において,高感度でかつ毒性発現メカニズムを反映し得る毒性学的バイオマーカーの設定とその利用が進められている。毒作用発現の様々なステージにおいて,毒性反応が表現型(フェノタイプ)として現れる前に,遺伝子発現変化を引き金として,そこからカスケード的に起こり得る発現因子(タンパク質,内因性代謝物質,等)の変化を捉えることが可能であれば,より早い段階において,後に起こり得る毒性の兆候を捉えることが可能となる。このような観点からトキシコゲノミクス,トキシコプロテオミクスおよびトキシコメタボノミクスを用いて,それぞれmRNA発現プロファイル,タンパク質発現プロファイルおよび内因性代謝物変動プロファイルを調べ,その中から毒性学的バイオマーカーを探求することが試みられている。
毒性学的バイオマーカー探索の過程において,オミクスは単独ではなく,組み合わせた形のトキシコパノミクスとして運用していくことが重要となってきている。遺伝子の発現量とその遺伝子がコードするタンパク質の発現量,加えて,疾患や外部刺激によるそれらの発現変動レベルは必ずしも一致しないため,遺伝子発現のみでなく,遺伝子情報を基に翻訳され,実際に生体内で機能しているタンパク質を調べることも重要とされている。また,必ずしも遺伝子に直接コードされないと思われる生命現象や反応が存在することも分かってきており,このような反応を捉えるためにも,生体内に存在する内因性代謝物総体(メタボノーム)を計測することも重要である。すなわち,毒性学的バイオマーカーとして利用できる変動因子は,トキシコパノミクスのいずれの手法からも探索され得る可能性がある。これら遺伝子発現・タンパク質発現および内因性代謝物の変動を解析することは,毒作用検知のための特異的で高感度な毒性学的マーカーを探索していることになる。
著者関連情報
© 2006 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top