抄録
種々の生物のゲノム配列が続々と決定されたことに伴い、高密度オリゴヌクレオチドアレイ解析は遺伝子発現およびジェノタイピングのみならず、ゲノム機能解明のためのハイスループットかつ強力な解析ツールとなっている。これらアレイには既に目的に応じた様々な種類が利用可能である。タイピングアレイはすでにアレル別染色体変異やコピー数多型(Copy Number Polymorphism, CNP)の解析に応用されている。タイリングアレイはゲノム配列から一定の間隔毎に、連続的なプローブを設計して配したものである。これを利用して新規転写産物の発見、ChIP-chip解析によって転写因子結合部位すなわち下流標的遺伝子の探索、ゲノムメチル化やクロマチン修飾などエピジェノミクス解析にまでその応用範囲が拡がりつつある。
今回、我々はタイリングアレイを利用してメチル化DNA領域を網羅的に検出した。具体的には、ヒト大腸癌細胞株HCT116, DLD1, SW480のDNA 10ugより抗5’メチル化シトシン抗体(α5mC)により免疫沈降を行い、得られたDNAフラグメントからアレイ解析を施行している。結果、ヒトゲノムの1%の領域(ENCODE領域)では、HCT116で860カ所の高頻度メチル化サイトが検出された。これらの領域は498カ所(57.9%)がCpGアイランドに重なっていた。得られた領域をランダムに選択した26カ所のbisulfiteシークエンスでは25カ所で高頻度にメチル化CpGを認め、この手法の信頼性が示された。また遺伝子のプロモータ領域に対して設計したタイリングアレイについても解析しており、共に報告したい。