日本トキシコロジー学会学術年会
第33回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-015
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一般毒性
毒性所見の回復性について - 新薬承認申請概要・審査報告書からの考察 -
*飯島 護丈倉田 昌明磯部 雄司
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抄録
動物を用いた毒性試験における所見の回復性は毒性評価として重要であるが,医薬品における規制当局(ICH)のガイドラインでは,「毒性変化の可逆性を検討するため,いずれかの試験で回復性試験を設けることを考慮する」と概略的な記載になっている。多種多様な所見の回復性の機序・要因については,相互作用など毒性を増悪される場合に比べて,まとめたものは少ない。今回,公開されている医療用医薬品の新有効成分含有医薬品における審査資料,申請資料概要151品目(平成11年9月から平成18年1月まで)を用いて,回復性試験の実施状況並びに回復性の所見・評価を調べた。
その結果,回復性試験は臨床適用の短い期間,間欠・局所投与などの一部の例外を除き,134品目で実施されていた。審査/調査報告書では,84品目の回復性について記載が認められた。多くの毒性所見は回復傾向を示したが,肝臓の変化,腎糸球体・尿細管障害,甲状腺などの回復性の審査経緯は慎重に記載されていた。休薬後も認められた所見は,血中カルシウムの変動,精巣・卵巣・眼・骨組織の変化,組織の線維化・石灰沈着などであった。休薬後に発現した所見は,高カルシウム血症に伴う変化,一部のバイオ医薬品における抗体産生であった。
今回の調査から,細胞死に随伴した所見,体内のホメオスターシスに影響を及ぼす例では,回復遅延の傾向が認められた。回復性の記載は約6割の審査報告でみられ,ヒトにおける安全性の担保について重要な指標と考えられた。その他,直接・二次的要因,曝露期間,臓器の特殊性,障害進行度と回復性の関連についても調べた。
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© 2006 日本毒性学会
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