抄録
【目的】 違法ドラッグ5-Methoxy-N,N-diisopropyltryptamine (Foxy) の毒性解明研究の一環として、ラット肝ミクロゾーム (Ms) およびリコンビナントCYP分子種を用いて、Foxyのラットin vitro代謝を検討した。【方法】成熟Wistar系雌雄ラット、β-ナフトフラボン (BNF 20 mg/kg/day, i.p., 3 days) 前処置雄ラットの肝Ms、あるいはリコンビナントCYP分子種(CYP1A1、-1A2、-2A1、-2B1、-2C6、-2C11、-2C12、-2D1、-2D2、-2E1及び-3A2)を酵素源としてFoxyとNADPH生成系存在下に反応させ、生成したO-脱メチル化体、N-脱イソプロピル化体及び6位水酸化体を逆相系HPLCにより定量し、速度論的解析を行った。【結果・考察】無処置雌雄ラット肝MsによりFoxy(1 mM)から主代謝物としてO-脱メチル化体及びN-脱イソプロピル化体が生成した。雌雄いずれの場合もEadie-Hofstee plotsでFoxy O-脱メチル化反応は2相性、N-脱イソプロピル化反応は1相性を示した。またO-脱メチル化活性に雌雄で顕著な差はなかったが、N-脱イソプロピル化活性に雄>雌の性差が観察された。BNF前処置雄ラット肝Msでは無処置ラットで検出されなかった6位水酸化体が生成し、Eadie-Hofstee plotsで1相性を示した。リコンビナント酵素のFoxy酸化活性は、O-脱メチル化反応でCYP2D2>CYP2C6>CYP1A1、N-脱イソプロピル化反応でCYP2C11>CYP1A2>CYP2C6>CYP3A2、6位水酸化反応ではCYP1A1のみが顕著な活性を示した。阻害剤添加実験の結果も併せて報告し、ラット肝におけるFoxy代謝に関与する主要なCYP分子種について考察する。