日本トキシコロジー学会学術年会
第34回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: O-49
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試験法、バイオマーカー、パノミクス、農薬、環境
In vitro発がんプロモーション試験におけるマーカー遺伝子の探索
*大野 克利前島 秀樹東 幸雅山田 敏広
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抄録

[目的]食品中の素材、添加物、危害物質などの発がん性の有無と強弱を見極め製品から排除することは企業責任として大きな課題である。多段階発がんの発がんイニシエーションについては、ヒト細胞を用いた試験法(Ohno et al. Mutat. Res. 588)を開発し、数多くの食品添加物、食品危害物質を評価してきた。発がんプロモーションに関しては、形質転換試験など発がんプロモーターを検出できるIn vitro試験法が知られている。しかし、試験期間が長く、検体処理数に限界があり、顕微鏡観察による判定など操作が煩雑である。そこで、発がん性のリスク評価の一環として、ファーストスクリーニング法として適用可能な短期間で簡便な発がんプロモーター検出系の開発を目的とし、形質転換試験における発がんプロモーションのマーカー遺伝子の探索を実施したので報告する。 [方法] MCAでイニシエーション処理したBALB/c 3T3細胞に発がんプロモーターを添加し、36から72時間後に総RNAを抽出した。陰性対照は溶媒のみ、陽性対照はTPAを用いた。得られたRNAについてDNAマイクロアレイ(Affymetrix社GeneChip Mouse genome 430 2.0 Array)を用いて網羅的遺伝子発現解析を実施した。また、遺伝子発現量とフォーカス数を比較検討した。 [結果] 作用メカニズムの異なる発がんプロモーター処理で共通して陰性対照に対し1.5倍以上の発現量を示した遺伝子群として、細胞周期関連遺伝子、細胞増殖関連遺伝子、がん関連遺伝子などを検出した。発がんプロモーション作用の無い物質では、これらの遺伝子発現量の増加は認められなかった。以上より、これらの遺伝子群は、発がんプロモーションを検出する形質転換試験におけるマーカー遺伝子として適用可能であり、これらを用いることにより、発がんプロモーターを短期間に検出できることが示唆された。

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© 2007 日本毒性学会
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