日本トキシコロジー学会学術年会
第34回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: O-50
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試験法、バイオマーカー、パノミクス、農薬、環境
高分解能マジック角回転核磁気共鳴法を用いた臓器のメタボノミクス解析
*山本 利憲山田 弘堀井 郁夫
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抄録

従来,核磁気共鳴法(NMR)によるメタボノミクス解析では,主に尿及び血清を測定対象としてきた。しかしながら,これら体液中における内因性代謝物の変化は,生体内の様々な臓器毒性の結果であり,しばしばその特異性が問題とされてきた。そこで我々は,高分解能マジック角回転NMR法を応用し,臓器そのものメタボノミクス解析の実施を検討した。摘出臓器を静磁場に対してマジック角(54.74度)傾けて高速回転すると,核スピンが関わる双極子相互作用及び化学シフト異方性等を平均化することができる。この方法により,臓器中に含まれる様々な内因性代謝物の情報を直接得ることが可能となる。測定は,600MHz NMR分光計で,水及び高分子に由来する成分を消去するパルス系列を用いて実施した。回転速度は5kHz,測定温度は常温を採用した。まず,ラット肝臓を用いて測定中の臓器の安定性を検討した結果,測定開始後約4時間まで顕著なスペクトルの変化は認められなかった。次に,雄性ラットに,肝毒性を惹起するアセトアミノフェン(APAP)及び四塩化炭素(CTC)の毒性用量を経口投与し,投与後6及び24時間に採取した肝臓を用いて解析を実施した。主成分分析の結果,コントロール群の形成するクラスターに対して,APAP及びCTCともに明らかに異なるクラスターを形成した。PLS-DA解析の結果から,寄与している成分を特定すると,それらは,APAP投与群ではグルタチオンの減少,CTC投与群では脂質の顕著な増加などであった。これらの変化は,報告されている毒性発現メカニズム及び病理組織学的検査の結果と矛盾しないものであった。加えて,APAP投与後6時間においては,明らかな病理変化が認められていないにも関わらず,コントロール群と異なるプロファイルを示していた。以上のことから,本法を用いたメタボノミクス解析により,毒性メカニズム解析,毒性バイオマーカー探索,さらには毒性予測が可能となるものと推察された。

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© 2007 日本毒性学会
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