日本トキシコロジー学会学術年会
第34回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: O-55
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試験法、バイオマーカー、パノミクス、農薬、環境
エストロゲンレセプターとAhR repressorのクロストーク
*菅野 裕一朗高根 優介中浜 隆之井上 義雄
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抄録

【目的・背景】Aryl hydrocarbon receptor(AhR)はダイオキシンなどのリガンドによって活性化し、CYP1A1などの遺伝子プロモーター上に存在するXenobiotic response element(XRE)上に結合し標的遺伝子を活性化する。AhR repressor(AhRR)は、AhRと構造が類似しているが転写活性化能を持たないためXRE上でAhRと競合しAhRによる転写活性化を抑制するタンパク質として同定された。しかしながら、そのほかの機能に関してはほとんど明らかになっていない。そこで我々はヒト乳がん細胞にAhRRを過剰発現させた安定発現株を作成し、AhRRの機能を明らかにすることにした。AhRがEstrogen receptor(ER)とクロストークしERの機能を調節することが知られていることなどから、AhRRとERのクロストークの可能性について検討することにした。 【結果・考察】エストロゲンによる細胞増殖促進作用へのAhRRの影響を、MCF-7細胞とMCFRR4(AhRR過剰発現株)に17β-estradiol(E2)を添加し、細胞増殖をMTS アッセイにより評価した。MCF-7細胞ではE2による細胞増殖促進が観察できたが、MCFRR4ではE2による細胞増殖の促進は観察することができなかった。またAhRRはエストロゲン応答配列であるc38EREとC3-luciferaseの両方の活性を抑制した。また、免疫共沈降法によりERとAhRRの結合が確認された。これらの結果から、AhRRはERと結合し、ERを介した転写を抑制することによってMCF-7細胞の増殖を抑制している可能性が示唆された。本研究からAhRRにはAhRとXRE上で競合する“AhR repressor”としての機能に加えてERとの相互作用という新たな機能が存在することが示された。

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© 2007 日本毒性学会
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