主催: 日本トキシコロジー学会
【目的】乳がん治療剤であるタモキシフェンは、乳がん細胞では抗エストロゲン様作用を示すが、子宮ではエストロゲン作用を示し、副作用として子宮体がんのリスクが増加する。近年、aryl hydrocarbon receptor(AhR)はestrogen receptor(ER)のAF-1領域(AF-1)へ結合し、ER応答性遺伝子発現を修飾することが報告されている。このER-AhRクロストークをベースとしてより副作用の少ない乳がん治療効果のある化合物をスクリーニングすることを目標とした。本研究ではAF-1活性に着目し、まずAF-1活性検出系におけるAhR-ERクロストークについて調べ、この系の有用性について検討した。つぎにフラボノイド類を用いてスクリーニングを試みた。 【方法】AF1活性検出にはERαのAF-1領域をGAL4-DBDに融合させたタンパク質の発現ベクター(pBIND-AF-1)とレポーターベクター(pG5luc)を MCF-7またはCOS-7細胞にトランスフェクト後、ルシフェラーゼ活性を測定した。 【結果】AF-1活性へのAhRの影響については、AhR 単独では抑制的に作用し、AhR/Arnt では促進的に作用した。AhR/Arnt 存在下でAhR の転写活性化領域欠失ミュータントは抑制的に作用した。AhRリガンドについてAF-1活性を調べると、3-MC、3,4-DMF、α-NFでは活性化、β-NFでは抑制された。フラボノイド類については、myricetin、 rutin、luteolin、 phloretinでは活性上昇が認められ、kaempferolで活性抑制が認められた。フラボノイド類の乳がん細胞増殖への影響については、rutin、naringenin、phloretinでは増殖促進が認められ、kaempferolで増殖抑制が認められた。