日本トキシコロジー学会学術年会
第34回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: SY2-3
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環境汚染物質と生活習慣病
ダイオキシン曝露は糖尿病の発症に関与しているのか?
*遠山 千春
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抄録

 1990年代はじめに米国においてダイオキシンの職業曝露により耐糖能低下の報告がなされ、その後、ダイオキシン曝露と糖尿病発症との関係を示唆する疫学調査が報告された。それらは、ベトナム戦争における枯葉剤散布(Ranch Hand)作戦に関わった退役軍人を対象としたコホート、工場における職業性曝露集団、イタリア・セベソにおける一般住民コホート、廃棄物汚染地区近隣の住民に関する研究である。  In vivo実験研究では、2,3,7,8-四塩素化ジベンゾ-p-ジオキシン(TCDD)による消耗性症候群の発症条件下において、小腸におけるグルコースのトランスポーター発現上昇(SLGT1及びGLUT2)と血糖値の上昇、あるいは妊娠ラットへのTCDD曝露における胎仔死亡と胎盤におけるGLUT3発現異常が報告された。また、TCDDの低用量曝露を受けたモルモットで、脂肪組織や膵臓へのグルコース取り込みが用量依存的に減少すること、ならびに脂肪細胞(3T3-L1)ではGLUT4による糖の細胞内輸送がTCDDにより抑制されることが報告されている。また、2型糖尿病患者の膵島では、ダイオキシン受容体AhRとヘテロダイマーを形成するARNTの発現レベルの顕著に低下すること、ならびにβ細胞特異的ARNTノックアウトマウスではインスリン分泌能阻害や耐糖能異常が示されている。  他方、妊娠マウス(C57BL/6系)にTCDDを一回経口投与し、生まれた仔を通常食または高カロリー食で飼育した場合、生後26週目までの間に、TCDDによる耐糖能やインスリン分泌能への影響は観察されていない。  本講演では、これらの知見を元にダイオキシンと糖尿病発症との関係を考察する。

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© 2007 日本毒性学会
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