日本トキシコロジー学会学術年会
第34回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-2
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毒性発現機序
銀杏中毒患者における血中ビタミンB6濃度変化
*小林 大祐吉村 昭毅條野 敦史和田 啓爾
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キーワード: ビタミンB6, 中毒, イチョウ
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抄録

【目的】我々は4’-O-Methylpyridoxine (MPN)が銀杏中毒の原因物質であり、銀杏中毒患者の血中に高濃度のMPNが存在することを明らかにしている。昨年の年会では、ラットにMPNを投与すると血漿中Pyridoxal-5’-phosphate(PLP)濃度がわずかに減少し、Pyridoxal(PL)およびPyridoxic acid (PNA)濃度が増加することを報告した。本発表では銀杏中毒のメカニズム解明を目指して、ヒトでの血中VB6濃度におよぼすMPNの影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】銀杏中毒が疑われた患者からインフォームドコンセントをとり、中毒時の血中に存在するMPNおよび各種VB6誘導体の濃度を測定した。MPNおよび各種VB6誘導体[PLP, PL, Pyridoxine(PN), PNA]]の濃度は、semicarbazideによる誘導体化法を組み合わせた蛍光検出HPLC法により測定した。
【結果および考察】測定したすべての患者の血中からMPNが検出され、銀杏中に含まれるMPNによる中毒であると考えられた。ラットで観察されたように血中のPLおよびPNAが比較的高値を示し、PLP濃度は正常人で報告されている値と同程度または低値を示した。この結果について、以下の2つの可能性が考えられた。(1)MPNからPLが生成され、PLはさらにPNAに変換された。(2)MPNは、PLからPLPを生成するpyridoxal kinase活性を阻害するため、PLが増加し続いてPNAが生成した。血漿中VB6濃度は必ずしも組織中のVB6濃度と相関しないため、組織中ではさらにVB6欠乏状態にある可能性もあり、今後組織中VB6濃度へのMPNの影響の検討が必要であると思われる。

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© 2007 日本毒性学会
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