日本トキシコロジー学会学術年会
第34回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-9
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毒性発現機序
Lipopolysaccharide投与ラットの特異体質性肝障害モデルとしての有用性評価(1)~サイトカイン測定を中心とした一般毒性評価からの知見~
*熊谷 和善伊藤 和美河井 良太伊藤 志保社領 聡清沢 直樹古川 忠司矢本 敬寺西 宗広真鍋 淳
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抄録

【目的】 Lipopolysaccharide (LPS)は動物モデルで,ある種の肝障害誘発薬剤の毒性発現の閾値を低下させることから,特異体質性肝障害に関与する要因に何らかの影響を与えると推察される。これまで,LPSラットモデルでサイトカインの変化を詳細に検索した報告はない。今回,評価報告のある2種の薬剤をこのモデルに投与し,生化学的,病理学的検査に加え,血清中サイトカインの変化を検索した。 【方法】10週齡の雄性F344ラットにLPS (1.0 x 104 EU/kg, i.v.)を投与し,その2時間後に生理食塩水,ranitidine (RA,30 mg/kg, i.v.)またはchlorpromazine (CP, 10 mg/kg, i.p.)を投与した (LPS/Saline,LPS/RA,LPS/CP群)。また,LPSを投与せずに生理食塩水,RAまたはCPを投与する群を設けた。生理食塩水,RAまたはCP投与後2,6,24時間に肝臓を採取した。全ての群に関して病理検査を行うと共に,血液化学検査および血清サイトカイン濃度測定を実施した。 【結果・考察】LPS/Saline群の一部で軽度なALT値上昇がみられたが,LPS/RAおよびLPS/CP群でALT値上昇が顕著であった。病理学的にLPS/RAおよびLPS/CP群で肝細胞微小壊死巣形成を特徴とする肝臓の障害性変化が投与後24時間に認められた。血清中フィブリノーゲン値はLPS/Saline群で投与後2および6時間に減少したが,LPS/RAおよびLPS/CP群でその減少の程度が増強された。また,LPS/Saline群でTNFα等の血清中の炎症性サイトカイン濃度が投与後2または6時間に増加したが, LPS/RAおよびLPS/CP群でIL-1β,IL-6,IFNγ等の炎症性サイトカインがLPS/Saline群で認められた増加レベルと比べ,より高値を示した。以上より,LPSラットモデルはLPSによる凝固系の亢進に加え,サイトカインの変動を介して薬剤の肝毒性の閾値を下げると推察され,血清サイトカイン濃度測定は本モデルによる特異体質性肝障害の検討に有用と考えられた。

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© 2007 日本毒性学会
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