日本トキシコロジー学会学術年会
第34回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-12
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毒性発現機序
エンドサイトーシス制御に関わるArk/Prk kinase familyのアドリアマイシン耐性獲得機構における役割
*高橋 勉永沼 章
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抄録

アドリアマイシン (ADM) は癌の化学療法に幅広く用いられているが、癌細胞の本薬剤に対する耐性獲得が問題となっている。我々はADM耐性獲得機構を明らかにするため、出芽酵母を用いてADM耐性に関わる遺伝子群の検索を行い、これまでに数種の新規耐性遺伝子の同定に成功している。その中の一つにAKL1があり、この遺伝子の高発現酵母はADMに対して顕著な耐性を示す。Akl1はその機能についての報告はほとんどないが、配列上の特徴からエンドサイトーシスや細胞骨格形成の制御に関与するArk/Prk kinase familyの一つと考えられている。そこで、Ark/Prk kinase family (Ark1、Prk1およびAkl1) の高発現がADM感受性に与える影響を調べたところ、Prk1とAkl1のみが高発現によって酵母にADM耐性を与えた。 Prk1はエンドサイトーシスや細胞骨格の形成に関わるSla1/Pan1/End3 complex中のSla1およびPan1をリン酸化することによって、本complexの解離を促すことが知られているが、Akl1高発現によるADM耐性獲得には本complex中のEnd3およびSla1の存在が必須であることが判明した。また、Akl1高発現がPrk1高発現と同様に、Sla1/Pan1/End3 complex中のPan1のリン酸化を促進し、エンドサイトーシスの異常を引き起こすことも明らかとなった。したがって、Akl1はリン酸化を介してSla1/Pan1/End3 complexの機能、すなわちエンドサイトーシス能、を低下させることによってADM毒性を軽減していると考えられる。また、ヒトArk/Prk kinase familyの一員であるAAK1を高発現させたヒト胎児腎由来HEK293 細胞がADM耐性を示すことも確認された。AAK1の高発現もエンドサイトーシスの低下を引き起こすことが知られていることから、酵母細胞のみならずヒト細胞においてもArk/Prk kinase familyがエンドサイト-シスの抑制を介してADMの毒性を軽減していると考えられる。

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© 2007 日本毒性学会
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