日本トキシコロジー学会学術年会
第34回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-13
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毒性発現機序
硝酸鉛による血中テストステロン低下作用のラット-マウス間での種差
*関本 征史小島 美咲増井 俊充根本 清光出川 雅邦
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抄録

【目的】ラットに硝酸鉛を投与すると、血中テストステロン量の低下や肝細胞増殖が起こることが知られている。一方、我々はこれまでに、マウスでは硝酸鉛投与による肝細胞増殖作用が起こらないことを見いだしており、テストステロン低下作用における種差の有無にも興味が持たれる。そこで、本研究では、硝酸鉛による血中テストステロン低下作用のラット-マウス間における種差の有無について検討した。
【実験方法】7週齢雄性SDラットおよびddYマウスに硝酸鉛(100 µmol/kg, i.v)を投与し、経時的(0-72時間)に屠殺した。血中総テストステロン量はラジオイムノアッセイにより、また、精巣テストステロン合成酵素(CYP11A1, 3ß-HSD, CYP17)の遺伝子発現量をRT-PCR法によりそれぞれ測定した。
【結果・考察】血中テストステロン量は、ラットでは硝酸鉛投与12時間後で最も低値となり、この低下は72時間後まで維持された。一方マウスでは、硝酸鉛投与による低下は認められなかった。精巣テストステロン合成酵素(CYP11A1, 3ß-HSD, CYP17)の遺伝子発現は、ラットでは各遺伝子とも硝酸鉛投与6-12時間後より72時間後まで有意な減少が認められた。逆にマウスでは、CYP11A1遺伝子の発現が硝酸鉛投与24-48時間後に増加し、他の遺伝子の発現には有意な変動は認められなかった。以上の結果より、硝酸鉛の血中テストステロン低下作用にはラット-マウス間で種差が見られること、さらに、この種差はテストステロン合成酵素の発現変動の差に起因することが示唆された。

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© 2007 日本毒性学会
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