日本トキシコロジー学会学術年会
第34回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-15
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毒性発現機序
硝酸鉛投与によるマウス肝でのサイトカイン誘導とHMG-CoA reductaseおよびCYP7A1遺伝子の発現変動との関連性
*小島 美咲芦野 隆吉田 武美岩倉 洋一郎出川 雅邦
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抄録

 硝酸鉛(LN)をラットに投与すると肝臓におけるTNF-αやIL-1βの産生量が増すこと、また、コレステロール生合成酵素(HMG-CoA reductase:HMGR)および代謝酵素(CYP7A1)の遺伝子発現が、それぞれ上昇および低下することを報告してきた(Toxicol. Lett., 154, 35, 2004)。一方、HMGRの遺伝子発現はTNF-αやIL-1βにより亢進すること、また逆にCYP7A1のそれは低下することが報告されており、LNによるこれら遺伝子の発現変動にもTNF-αやIL-1βの関与が考えられる。最近、我々はTNF-α欠損マウスを用いて、LNによるCYP7A1遺伝子の発現低下はTNF-α非依存的であることを示し、この発現低下にはIL-1βが関与している可能性を示した (Toxicol. Sci., 87(2), 537, 2005)。
 本研究では、IL-1α/IL-1β欠損BALB/cおよびTNF-α欠損C57BL/6Jマウスを用いて、LN 投与(100 μmol/kg, i.v.)による、肝臓でのCYP7A1およびHMGR遺伝子の発現変動をそれぞれ対応する野生型マウスと比較した。
 野生型マウス(BALB/cとC57BL/6J)では、LNの投与によりいずれにおいても 、投与12時間後に、CYP7A1遺伝子の発現低下とHMGR遺伝子の発現上昇が認められた。このCYP7A1遺伝子の発現低下は、TNF-α欠損マウスでも認められたが、IL-1α/IL-1β欠損マウスでは認められなかった。また逆に、野生型マウスで認められたLN投与によるHMGR遺伝子の発現上昇は、IL-1α/IL-1β欠損マウスでも認められたが、TNF-α欠損マウスでは認められなかった。以上のことから、LNによるCYP7A1遺伝子の発現低下にはIL-1が、HMGR遺伝子の発現上昇にはTNF-αが関与することが示唆された。

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© 2007 日本毒性学会
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