日本トキシコロジー学会学術年会
第34回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-14
会議情報

毒性発現機序
ミトコンドリア毒性とその機序解明について
*柘植 真治鷲塚 昌隆
著者情報
キーワード: ミトコンドリア毒性
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

 ミトコンドリア毒性は化合物の開発上障害となるため,その毒性機序を解明することは、毒性の重篤性の判断及び毒性回避という点で重要である。ここでは創薬段階におけるミトコンドリア毒性の検討方法について発表する.
 化合物Aは処理後1時間で細胞内ATPの枯渇が認められたが,その時点で膜障害は認められなかった.そこで,次にミトコンドリアにおけるATP合成の阻害について検討した.ATP合成阻害の機序には,電子伝達系阻害,FOF1-ATPase阻害,脱共役があり,さらに脱共役は,プロトノフォア,イオノフォア,PTP(Permeability Transition pore)開口にわけられる.まず,FOF1-ATPase阻害作用について検討した.単離したFOF1-ATPaseを化合物Aで処理したが,酵素阻害は認められなかった.次に,ミトコンドリアの膨潤について検討した. ATP合成阻害剤はいずれもミトコンドリアの膨潤を引き起こすが,PTP開口による膨潤は他の機序による膨潤より強く、単離ミトコンドリアにおける540nmの吸光度変化により検出できる.化合物Aではミトコンドリアの膨潤が認められ,代表的なPTP開口阻害剤であるATPおよびADPで阻害された.また,別のPTP開口阻害剤としてCyclosporin Aが一般的に用いられているが,化合物Aによるミトコンドリア膨潤はCyclosporin Aでは阻害されなかった.これらのことから,化合物Aによるミトコンドリア毒性はCyclosporin A 非感受性PTP開口によるものであると考えられる.
 ミトコンドリア毒性を有するか否かは、今回検討したように,細胞内ATP残存率,FOF1-ATPase阻害,ミトコンドリア膨潤などを検討することで判断できる.

著者関連情報
© 2007 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top