日本トキシコロジー学会学術年会
第34回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-17
会議情報

毒性発現機序
アンピシリンの併用はコール酸による肝毒性を増強する
*高松 裕樹松田 良樹宮田 昌明山添 康
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】 胆汁酸動態の調節を担う核内受容体、farnesoid X receptor (FXR)を欠損させたマウスにコール酸(CA)を投与すると胆汁鬱滞を伴う肝障害が認められる。しかし、野生型マウスにCAを投与しても肝障害に抵抗性を示す。これに肝内胆汁酸濃度の違いが関わると考えられるが詳細は明らかでない。このため、野生型マウスでCAにより肝障害を誘発するモデルが必要とされている。CAは腸内細菌による代謝を受けるため、腸内細菌に作用する抗生物質の処置はCAの体内動態を変動させると可能性がある。そこで、本研究では経口吸収型の抗生物質であるアンピシリン(ABPC)をCAに併用することで胆汁酸動態がどのように変動するか、また毒性とどのように関連するかを調べ、CA誘発肝障害の機序を知ることを目的とした。
【方法】 C57BL/6N雄性マウスに1.0% CAに加えて臨床相当用量の0.025%から0.5%までのABPCを含む餌を6日間自由摂取させ、肝臓中の胆汁酸組成ならびに肝障害マーカーである血漿ALT活性を測定した。
【結果】 予期されたようにABPCの併用はCA単独投与時に比べて肝臓中のタウロデオキシコール酸 (TDCA)濃度を減少させた。また、タウロコール酸(TCA)濃度が著しく上昇した。しかし、血漿ALT活性はむしろABPC併用群において著しく上昇した。CAあるいはABPC単独投与群では血漿ALT活性の有意な上昇は認められなかった。肝臓中のTCA濃度と血漿ALT活性によい相関性が認められた。肝臓中TCA濃度に対する血漿ALT活性の比をFXR欠損マウスにCAを投与したときのものと比較すると両者に差異は認められなかった。
【結論】 野生型マウスにCAとABPCを併用すると肝臓中の胆汁酸濃度が上昇し、CA誘発肝障害が増強された。この肝障害増強の主たる要因は肝内TDCAではなくTCAであることが示唆された。また、野生型マウスとFXR欠損マウスの比較により、FXRの有無に関わらず、肝臓中のTCAがCA誘発肝障害のレベルを決定すると示唆された。

著者関連情報
© 2007 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top