日本トキシコロジー学会学術年会
第34回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-18
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毒性発現機序
マウスパラコート肺モデル早期での遺伝子発現とサイトカインレベルの変化
*富田 正文奥山 敏子勝山 博信日高 和夫渡辺 洋子西村 康光前田 恵大槻 剛巳
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抄録

 除草剤パラコート(PQ)による肺障害ではPQ暴露後数日間(早期)にみられる”destructive phase”と数週間経過して(晩期)肺線維症に発展する”proliferative phase”が観察される。昨年我々が本会で発表したマウスのPQ肺モデルでも、投与後5~10日で死亡する個体,その後3週間まで生存を維持するが顕著な線維化が観察される個体が存在する。今回はPQ障害の早期に焦点をあて、PQによる遺伝子発現変化さらに血中サイトカインレベルの変化について検討した。
方法:昨年同様,雄性C57BL/6JマウスのPQ肺モデルを用いた。PQ暴露後6, 24 h,5d に肺を摘出しRNAを調製した。cDNAを調製し,real-time PCRによって45遺伝子の経時的発現変化を検討した。一方,尾血管から経時的(1, 3, 6, 24 h & 5 d)に採血しCytometric Bead Array Systemで6種のサイトカイン血中レベルの変化を測定した。
結果と考察: PQによる肺障害の発生機序に関与する候補遺伝子が数種示唆された。すなわち,6 hで2倍以上の有意な発現増加を示す遺伝子: Mt1, Mt2, Hmox1, Gcl, GR, IL-6, IL-13, Txn1, Fas, FasL, Lpin2, Mmp1a, Mmp12、および6 hから経時的に発現減少を示す遺伝子:Sfp-B, CAT, EC-SOD, GSTは,PQ障害早期の「初期マーカー」である可能性が高い。また5dのみに有意な増加を示す遺伝子:procollagen, Eln, Fin, Mmp9, Timp1および24 h以降に影響がみられるMmp3, Mmp8, VEGFAはPQ障害早期の「後期マーカー」である可能性が示唆された。一方,サイトカインはIL-6, IL-10, MCP-1などでPQによる有意な変化が認められ,肺障害の関与を強く示唆するものであった。

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© 2007 日本毒性学会
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