日本トキシコロジー学会学術年会
第34回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-25
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生殖発生幼若毒性
幼若ラットにおけるタウロコール酸経口投与時の胃粘膜障害に起因した全身症状への影響
*下郡 望川村 祐司庄司 陽子鈴木 幸吉黒沢 亨
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抄録

【目的】幼若ラットを毒性試験に用いる上でその特徴を知ることは重要である。我々は、胃粘膜に対して刺激性を有するタウロコール酸(TC)を用いて、ラットの胃粘膜防御機能の週齢差(2週齢と8週齢)について検討し、幼若(2週齢)ラットの特徴を明らかにした(第33回大会報告)。今回は、TC経口投与時の全身状態への影響について検討したので報告する。【結果】幼若(2週齢)ラットにTC 10 mmol/kgを経口投与したところ、投与後1hrから胃液量の増加および腺胃部粘膜上皮の壊死・脱落がみられ、投与後4hrから6hrまで持続・増悪する傾向が認められた。これらに対応するように、徐々に体温低下やヘマトクリット値の上昇が発現し、さらに投与後4hrに血液中Kの上昇がみられ、投与後6hrに血液pHの低下が認められると共に死亡例も観察された。成熟(8週齢)ラットでは、幼若ラットと同様に投与後1hrから6hrまで持続的に胃液量の増加がみられ、体重当りの胃液量も幼若ラットと差がなかったが、体温低下はみられず、血液検査でもほとんど変化はなかった。【考察】幼若ラットでは、TCによる胃粘膜刺激への適応反応として胃液分泌(水分の体外漏出)が亢進し、それに伴って血漿量が減少した結果、全身状態の悪化(アシドーシス等)に進展し死に至ったと考えられた。一方、成熟ラットでは、TC投与により幼若ラットと同程度の胃液分泌が発現しても血液濃縮はほとんどみられず、全身循環の維持能力が高いため全身状態の悪化には至らないと推察された。以上、2週齢の幼若ラットは胃粘膜障害に起因した全身状態への影響を受けやすく、成熟ラットより脆弱であると考えられた。

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© 2007 日本毒性学会
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