日本トキシコロジー学会学術年会
第34回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-32
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変異原性
Comet assay は何を検出しているか? -Acellular comet assay による検討-
*山中 妙子川口 恵未井上 達生門田 利人佐々木 有
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抄録

Acellular comet assayとはComet assayの変法の一つであり、細胞lysingの後に変異原処理をするものである。Lysing後の細胞を標的とするため、通常のComet assayで検出できるDNA損傷から、修復などの細胞機能によって派生したDNA損傷と初期損傷の減衰を除いた「真の初期損傷」のみを検出できる。Acellular comet assayと一般的なComet assay (Regular Comet assay)の結果を比較することで、Comet assayの結果に対する「真の初期損傷」の寄与量の解明を試みた。Regular Comet assayではWTK1細胞を各変異原で2ないし24時間処理し、直ちにComet assayの標本を作製した。Acellular Comet assayでは変異原無処理のWTK1細胞を用いて定法によって作製したComet Assayの標本に対して1時間以上のlysing処理を施し、各変異原で2時間処理した後、アルカリ下(pH12およびpH13)で電気泳動した。pH12ではDNA鎖切断(SSB)だけが、pH13ではSSB及びアルカリ脆弱部位が検出される。ENU、MNUではAcellular Cometの検出感度が高いだけでなくpH13とpH12の双方で陽性結果が得られた。一方Regular Comet assayではpH13でのみ陽性であった。これら変異原によって「真の初期損傷」としてのSSBが誘発されているが、Regular Comet assayではpH13でのみ陽性であったことから、SSBが誘発されていても、SSBは標本作製までの修復によって消失し、一般的なComet assayでは標本作製までの修復によって派生したアルカリ脆弱部位を検出していることが示唆された。UVCと4NQOではRegular Cometで陽性、Acellular Cometで陰性であった。よって、UVCと4NQOによるComet assayの陽性反応には細胞機能の寄与が大きいことが示唆された。

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© 2007 日本毒性学会
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