日本トキシコロジー学会学術年会
第34回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-31
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変異原性
加齢ラットにおけるコメットアッセイと8-OH-dG分析によるDNA損傷の評価と血液化学パラメーターとの関連
*橋本 和之高崎 渉真鍋 淳佐藤 至津田 修治
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抄録

【目的】DNA損傷における加齢の影響を評価するため,若齢(9週齢)および加齢(20ヶ月齢)F344ラットを用いて自然発症および化学物質誘発DNA損傷について検討し,生体機能とDNA損傷との関連を考察した。【方法】DNA損傷の評価にはコメットアッセイ(pH 9,12.1,13)および8-OH-dGアッセイを用い,肝臓と腎臓を標的とした。DNA損傷を誘発する化学物質として,メチルメタンスルフォネート(MMS,80 mg/kg)あるいはN-ニトロソジエチルアミン(DEN,160 mg/kg)を使用した。生体機能は血液化学的検査で評価した。【結果・考察】加齢ラットの肝臓と腎臓において,DNA損傷(pH 13)および8-OH-dGは増加し,pH 9および12.1におけるDNA損傷が増加しなかったことから,アルカリ脆弱部位と8-OH-dGが加齢ラットにおいて蓄積していると考えられた。MMSを投与した若齢および加齢ラットの肝臓および腎臓のDNA損傷は,投与3および24時間後でpH 12.1および13処理でともに増加したが,加齢ラットでのDNA 損傷の程度は小さく,投与3時間後に対する24時間後のDNA 損傷の減少は小さかった。DEN投与は若齢ラットの肝臓および腎臓におけるDNA 損傷をpH 12.1および13処理で増加させたが(3および24時間後とも),加齢ラットでは投与24時間後の腎臓においてDNA損傷をpH 12.1および13処理で増加させたのみであった。また,生化学パラメータの検討では,加齢ラットにおいてAST,ALT,T.BIL,総コレステロール,総タンパク,グロブリン,クレアチニン,Clは増加し,ALP,A/G,無機リンおよびKは減少した。これらのパラメーターはpH 13のDNA 損傷や8-OH-dGと連動していた。これらの結果から,加齢ラットではDNA修復能が低下している一方で,代謝活性化酵素の減弱によるDNA損傷誘発が抑えられていることが示唆された。さらに,加齢に伴う自然発症的DNA損傷の蓄積は生体機能に影響を与える可能性が示唆された。

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© 2007 日本毒性学会
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