日本トキシコロジー学会学術年会
第34回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-37
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発がん性
rasH2マウスの脾臓二段階発がんモデルを用いたTroglitazoneの脾臓血管腫瘍修飾作用についての分子病理学的解析
*金 美蘭松本 明出羽 康明西村 次平三枝 由紀恵三森 国敏
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抄録

【目的】昨年の第33回日本学術年会で、私共は、Troglitazone(PPARγアゴニスト)のrasH2マウスにおける6ヶ月間混餌投与実験を行い、雌の6000 ppm投与群において血管系腫瘍の増加傾向が認められ、rasH2マウスがTroglitazoneに対して軽度の発がん感受性を示すことを報告した。そこで、Troglitazoneの脾臓における血管系腫瘍誘発機序を明らかにするために以下の二段階発がん試験を行った。【方法】7週齢の雌rasH2マウスにウレタンを2回腹腔内投与(1000 mg/kg)し、投与1日後から0 ppmないし6000 ppmのTroglitazoneを16週間混餌投与した。解剖時には、脾臓重量を測定し、遺伝子発現解析用試料として脾臓腫瘍の一部を採取した。また、脾臓の病理組織学的検索や免疫組織学的検索を実施した。【結果】ウレタン単独群の4例とTroglitazone 6000 ppm群の6例が実験期間中に死亡した。重量測定では、Troglitazone投与群の脾臓重量に有意な増加は認められなかった。組織学的には、ウレタン単独群とtroglitazone投与群の全例で、脾臓の血管肉腫が認められたが、その発現頻度に有意な差は認められなかった。PCNAによる免疫組織学的染色では、Troglitazone投与群の脾臓血管肉腫においてPCNA陽性細胞数がウレタン単独群に比べて増加傾向を示した。血管肉腫についての遺伝子発現解析では、Troglitazone 投与群でras/MapKの活性化血管新生関連遺伝子や細胞周期、細胞増殖関連の遺伝子などの増加傾向が見られたが、ウレタン単独群との間に有意な差は認められなかった。以上のことから、TroglitazoneはrasH2マウスの脾臓血管肉腫に対して明らかな腫瘍修飾作用を示さないことが示唆された。

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© 2007 日本毒性学会
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