日本トキシコロジー学会学術年会
第34回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-41
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発がん性
アスコルビン酸と亜硝酸ナトリウム複合投与による変異原性ならびにラット前胃発がんイニシエーション作用の検索
*黒岩 有一山田 雅巳松井 恵子増村 健一岡村 俊也田崎 雅子梅村 隆志能美 健彦西川 秋佳広瀬 雅雄
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抄録
【目的】アスコルビン酸(AsA)は亜硝酸(NaNO2)共存下でin vitro染色体異常を誘発し、2剤をラットに複合投与すると前胃乳頭腫を発生させる。その発がん機序にはAsAとNaNO2の反応により生じるNOを介した酸化的ストレスの関与が示唆されている。そこで本研究では、酸化的DNA損傷修復遺伝子mutM欠損大腸菌株を用いた遺伝毒性試験を実施するとともに、2剤複合のラット前胃発がんイニシエーション作用について検索した。【方法】実験1:大腸菌WP2 uvrA/pKM101とそのmutM欠損株(YG5190)を用い、2,500、5,000、7,500および10,000 µg/plateのAsAに対して100 µg/plateのNaNO2を共存させた場合のプレート当たりの復帰変異株数を調べた。実験2:雄6週齢のF344ラットを用い、イニシエーション期にAsAとNaNO2をそれぞれ1%混餌ならびに0.2%飲水で12週間複合投与した。2週間の休薬後、既知の前胃発がんプロモーターであるbutylated hydroxyanisoleを1%混餌で64週間投与し、前胃の病理組織学的検索を行った。【結果】実験1:大腸菌WP2 uvrA/pKM101株では明らかな復帰株数の増加は認められなかったが、mutM欠損株では、NaNO2との複合によりAsA濃度依存的に復帰株数の増加がみられ、AsAを含まない対照値と比べて約3倍の高値を示した。実験2:本実験条件下では、AsAとNaNO2の複合は肉眼的な前胃結節を誘発しなかった。【結論】AsAとNaNO2の共存下では遺伝毒性が認められ、それには酸化的DNA損傷の関与が示唆された。一方、2剤複合投与によるラット前胃に対するイニシエーション活性は肉眼所見において明らかとはならず、酸化的DNA損傷が前胃発がんイニシエーションに及ぼす影響は少ないことが示された。今後、病理組織学的検査結果を加えて報告する。
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© 2007 日本毒性学会
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