日本トキシコロジー学会学術年会
第34回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-40
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発がん性
ラットにおけるグルコン酸銅およびカテキンの単独または複合投与による肝発がんリスクの検索
*阿部 正義臼田 浩二古川 賢Juneja Lekh Raj大久保 勉中江 大
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抄録

グルコン酸銅は、栄養機能食品の成分としての使用の拡大が予想される。一方、カテキンは、抗酸化作用等による好影響が期待され食品成分として汎用されるが、in vitroにおいて銅イオンの存在下で酸化性DNA傷害を生成するとも報告されている。本研究は、グルコン酸銅とカテキンの単独または複合投与による肝発がんリスクを検索した。実験は、6週齡Fischer 344系雄性ラットにDEN(200 mg/kg体重)を腹腔内投与して3週間後に2/3部分肝切除を施行し8週間後に屠殺するラット中期肝発がん性試験法に従って行い、イニシエーション処置の2週間後からグルコン酸銅(0、10、300、6000 ppm混餌)単独、カテキン(5000 ppm混水)単独、またはグルコン酸銅6000 ppm・カテキン併用投与にて6週間処置し、屠殺時に摘出した肝を用いて免疫組織学的解析及びReal time RT-PCRによる遺伝子発現解析を行った。その結果、グルコン酸銅6000 ppm群と併用群においては、GST-P陽性肝細胞巣数及び8-OHdG・PCNA・TUNEL陽性肝細胞数が有意に増加し、金属代謝(Mt1a, Tfrc)・アポトーシス(TNFα, p21, p53)関連遺伝子とがん遺伝子(c-fos)の発現が亢進した。一方、同時に行った短期投与試験では、無処置のラットにグルコン酸銅6000 ppmとカテキンを2週間単独または併用投与して屠殺し、肝について遺伝子発現解析を行ったところ、グルコン酸銅群と併用群でMt1a, Tfrc, p21の発現亢進を認めた。なお、Mt1aは、両試験の併用群において、グルコン酸銅単独群より発現が増強した。以上の結果から、グルコン酸銅は、高用量で肝発がんリスクを有し、その機序への酸化ストレス・細胞増殖・アポトーシスの関与が示唆された。一方、カテキンは、単独でリスクを示さず、グルコン酸銅と併用すると銅代謝能を亢進しつつも、発がん修飾作用を示さなかった。

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© 2007 日本毒性学会
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