日本トキシコロジー学会学術年会
第34回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-74
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肝・消化器系
急性肝炎ラットにおける運動機能障害の定量的評価
*河合 洋佐藤 陽子光本 篤史
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抄録
【目的】肝性脳症は、肝臓障害が原因となって意識障害や行動変化、昏睡が引き起こされる病態である。肝炎や肝硬変に合併して発症することが多く、血中アンモニアの上昇が重要な因子と考えられているが、詳細な作用機構等は不明な点が多い。肝性脳症の解明のためには、適切なモデル動物及び病態測定方法の確立が必要である。今回、急性肝炎モデル動物の生化学的及び行動薬理学的病態解析を行ない、肝性脳症様の変化を非侵襲的かつ定量的に測定する方法の構築を検討した。【方法】Wistar系ラット(雄性7 – 8週齢)を1日絶食後、チオアセトアミド(TAA)を24時間毎に2回腹腔内投与(100 mg/kgもしくは350 mg/kg)して急性肝炎モデルとした。血液生化学分析により血中アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)活性、アルカリフォスファターゼ(ALP)活性、総分岐鎖アミノ酸/チロシン比(BTR)及びアンモニア量を測定し、肝臓障害及び肝性脳症様変化の指標とした。また、赤外線モニター及びロータロッド試験により行動量及び運動協調性を測定して運動機能障害の指標とした。【結果・考察】TAA投与により血中ALT活性、ALP活性及びアンモニア値の上昇と、BTRの低下が認められた。これらの変化は肝性脳症にみられる変化と一致していた。TAA高用量投与群では、行動量の減少に続いて運動協調性が低下し昏睡に至る個体が多く検出された。また、行動量が減少した個体ほど血液生化学分析値の異常が大きい傾向が認められた。行動量は肝臓障害及び肝性脳症様の生化学的変化を反映すると考えられ、行動量測定により肝性脳症の進行を予測し、重症度の基準値を設定することができると期待される。本モデルにおいて、行動量解析及び運動協調性解析による運動機能測定は、肝臓障害に伴う肝性脳症様障害を非侵襲的かつ定量的に評価する方法として有用と考えられる。
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© 2007 日本毒性学会
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